林浩平の《饒舌三昧》

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zoom RSS 根津では高麗仏画展+世田谷美トランスエントランスは鈴木ユキオのダンス

<<   作成日時 : 2017/03/10 12:46   >>

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 ままかりの 酢漬を食はむ 春浅し    (飴山 實)

 難解な構造の句の多い飴山實ですが、時にはストレートに食欲を詠んだ作も残します。空気がようやく温んできて、酢漬のままかりで日本酒を一杯、という心境ですね、おおいに結構(笑)。

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 ここは南青山の根津美術館です。ここでは三月いっぱいまで「高麗仏画展」を開催しています。春らしくよく晴れた昼間を選んで訪ねてきました。

 朝鮮半島の統一国家だった高麗(918〜1392)は、仏教を国教としたため、各地に多くの寺院や仏画があったそうですが、蒙古の襲来によって多くが失われたので、現存するのは後代の13世紀半ばから14世紀のもので、点数も限られるとか。でもかなりの数が日本にあるそうで、今回の展示は、京都の泉屋(せんおく)博古館とここ根津美術館との共同プロデュースで、1978年の大和文華館以来の本格的な催しとのこと。これは面白そうです。

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 購入した図録を接写したのですが、どうも照明の反射があって見づらくなりましたが悪しからず。順に、「弥勒下生変相図」、「阿弥陀三尊図」、「阿弥陀八大菩薩図」です。阿弥陀如来を中心にした仏画が多いのですね。三尊図では、右に観音菩薩、左に勢至菩薩を従えています。高麗の仏さまは、どうも皆さん、向かって左向きの姿勢が多いのですね。うーん、これは南北に長い朝鮮半島ですから、西に沈む夕陽のほうに向かう、という構図でしょうか。

 そうそう、解説にも触れられますが、日本の阿弥陀来迎図は、背景にリアルな山や樹々が描かれているのに、高麗仏画にはそれらがないのですね。ここは、折口信夫の問題とした「山越阿弥陀」の特質、つまり西の山に沈む夕陽を阿弥陀さまとして描いた、というところに繋がるでしょう。要するに、日本、特に畿内というか西日本の地理的条件では、真西に沈む太陽を信仰の対象とできるのですが、朝鮮半島では、そうはならないから、でしょうか。朝鮮半島から見る夕陽、どんなものに見えるのかな。

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 実に魅力的な観音さまの絵もありました。「麗しき聖母像」と解説にありますが、まさにそうでしょう。水月観音像、二点ともに泉屋博古館蔵です。画面の左隅に、補陀落山にたどりついた善財童子が小さく描かれていますが、「母のごとき慈愛に満ちた観音」に対面する少年の姿が可憐です。もう一点の「地蔵菩薩像」もなかなか優れた作ですよ。こちらは根津が所蔵しています。

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 立派な仏具も展示されています。青銅に銀の象嵌のある香炉、そして浄瓶です。

 根津美術館に来れば、この庭園を散策しない手はありません。ここはたくさんの石仏なども置かれていて、見どころの多い場です。ここ何年かの間にずいぶんとまた手が加わったようですが。

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 さて話題は例によってガラリと変わります。世田谷美術館が、そのモダンなエントランス・ホールの空間を利用してコンテンポラリーダンスの舞台とする「トランス/エントランス」シリーズ、entranceでダンスを鑑賞してtrance状態を体験しよう、というわけですね、この言葉遊びがシャレてます(笑)。今回はもう15回めだとか。僕はこれまでご縁がなかったのですが、企画を担当された学芸員の塚田美紀さんからご招待いただき、いそいそ参上してまいりました。今回のダンサーは鈴木ユキオさんです。

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 鈴木ユキオさんのダンスは、年明けにセッションハウスで催された笠井瑞丈(みつたけ)さん振付の「雪の蠅」で瑞丈さんとデュオを踊ったのを見たのが最初でした。今回の「イン・ビジブル」は鈴木さん自身のコンセプトによるもの。夜の美術館、20時からの開演です。メインステージとなる大理石の階段には、いしわためぐみさん制作のオブジェが置かれています。そこにダンサーが登場して、ダンスの時間が始まりました。

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 Facebookにあったゲネプロの画像を使いました。舞台は、映像作家のみかなぎともこさんの映像とのコラボレーション、という感じで進みます。それから小野寺唯さん作曲の電子音も微妙な呼吸で絡んでいますね。無論、いしわたさんのオブジェとダンサーの身体との交感、という要素もありました。(共同作業者は皆さん女性のようですね。共演のダンサーも赤木はるかさん。ふとヌーヴェルヴァーグの映画監督だったエリック・ロメールのことを連想します。ロメール組は、カメラマンや録音のスタッフなど全員が女性だったとか。ロメール、「幸福な監督サン」でしたね(笑)。*追記です。すみません、音楽担当の小野寺唯さん、お名前からてっきり女性と判断したのですが、男性のよし、これは失敬しました。「皆さん女性」ではなく「女性が多い」と訂正です。)

 「雪の蠅」の印象が強かったし、なんでも故土方巽夫人の元藤Y子さんの弟子だった(元藤さんとは、NHKで僕が演出したETV特集「BUTOH創生譚」のロケで、西馬内(にしもない)の盆踊りをご一緒しました)ということなので、もっと舞踏ふうな激しい身体所作をメインにするのかなと思っていたのですが、いやなかなか繊細なアプローチなのですね。きわめて知的な方法意識の持ち主だなと感心しました。ただ全体として、映像表現などにちょっと遠慮している?印象もありました。後半でもっと身体性を露出させるとかの展開があっても良かったかもしれません。ともあれ、ダンサーの鈴木ユキオ、今後の活動に注目しましょう。

 お別れの引用句、久々に舞踏ファンでもあったこのひとの言葉から。

「私はふと舞踏を考えるとき、私の言語の習性や系列がにわかにくずれ去り、一瞬、眼のくらむような空白に陥るのをどうすることもできない。」
                                          (瀧口 修造  「舞踏よ」 『余白に書く』)

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