林浩平の《饒舌三昧》

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zoom RSS 吉増剛造さん、森岡書店とMOTサテライトでトークでした

<<   作成日時 : 2017/03/29 19:41   >>

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 いきいきと 三月生る 雲の奥      (飯田 龍太)

 龍太のこの名句、三月の初春を迎えていのちの芽生えがありありと実感される気配を、空の雲からも感じとる、というのですが、その三月、どうも今年はずっと冷気が居座って、寒いのですね。桜前線も停滞気味です。でもようやく週末あたりにはお花見が出来そうですかな。

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 この画像、森岡書店の銀座店です。ここは、期間限定で、一冊の本だけを販売する、というユニークな書店です。僕は、銀座に移る前の茅場町時代(当時はセンスの良さがウリの古書店でした)からも森岡書店で行われる展示やイベントに何度か顔を出して、このブログでも報告してきましたが、先日、3月16日でした、会場は近くのレンタルスペースでしたが、書店が主催する吉増剛造さんのトークイベントがあり、参加してきました。

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 このチラシにあるように、森岡書店では、吉増さんの論集『根源乃手』を今回の主役?に選び、また店内には吉増さんの旧蔵書も置いて即売する、という企画でした。トークイベントのあった3月16日は、吉本隆明さんが2012年に亡くなった命日にあたります。それで、「吉本隆明を語る夕べ」と題されました。吉増さん、吉本のことは「没後の門人」として師事?して、このところ「怪物君」シリーズではずっとその著書を筆写しています。

 会場には40名ほどが集まりましたね。吉増さん、まずこの本を出版した札幌の響文社の社長・高橋哲雄さんを紹介しました。なにしろ生原稿の感触を活かす形で、ジャバラ6折4丁を組み込んだ特製の書物を、定価3780円という通常の価格で販売しようという高橋社長の意気や良し!というわけです。

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 それから編集を担当した、日本近代文学館の学芸員の吉原洋一さん、そして装丁(装本)担当の井原靖章さんも紹介されます。井原さんの造本も見事なものでした。井原さん、そもそもは舞踏やライヴイベントなどのポスターデザインを手がけていたため、まずマリリアさんと知り合った、ということでした。

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 そして、この顔ぶれで、『根源乃手』に続く書物を鋭意制作中、と告知があって、その『火ノ刺繍』という本の目次紹介も配られました。近年の吉増さんのエッセイで単行本未収録のものや、色んなかたとの対話などが収められます。刊行予定は、今年の8月のよし。札幌では8月から、音楽家の大友良英氏がディレクターを務める札幌国際芸術祭が始まりますが、吉増さんはそのメインゲストとのことですから、それに合わせての発売開始でしょう。『火ノ刺繍』、これもたのしみです。

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 もうひとつ、吉増さんが出演されたイベントにも行ってきました。こちらは3月20日、月曜日ですが春分の日で祝日でした。全面改装中の東京都現代美術館(MOT)が、館外イベントとしてMOTサテライト「往来往来」という企画を開催しています、という話は、先月のこのブログでもお伝えして、それでその一環の句会の報告もしましたね。MOTサテライトのクロージングとして、この日、MOTの近くにある三好地区集会所でトークイベントが開かれたのです。

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 はい、ここが会場です(笑)。その二階のかなり広い畳の間、ふだんはここで町内会が持たれるのでしょうが、そこに座布団が並べられてます。前方にはワイドスクリーンがあって、トークに参加する、作品出展者の四人のかたがお見えです。

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 向かって左から順に、現代アーティストで映像作家で、昔は芸者さんの修行もしたという花代さん、それからオリジナルの日傘作家のひがしちかさん、そして吉増さんに、詩人のカニエ・ナハさん、この四人です。司会は、この企画の発案者でもあるMOTの学芸員の藪前知子さんがつとめます。(藪前さんとは、もう十数年前ですが、美術史家の林道郎氏が中心になって開いていた勉強会「瀧口修造研究会」で知り合ってます。お父さまの郷里が、僕と同じ和歌山、「そういえば、和歌山には「藪」の字のつく姓がわりあい多いのですよ」とはそのときに伝えました。藪中君とか薮田さんとか、知っています(笑)。)

 藪前さんのお話で、今回の企画のコンセプトもはっきり理解しました。そうか、参加アーティストの選出の基準は、MOTの所在地である清澄白河や深川との地縁、ということですね。ひがしちかさんのお店は清澄白河にあるとのこと、またカニエさんは、現代アートの鑑賞が好きで、それでこの近所にわざわざ引っ越したそうです。(すると、二年間ほどの改修休館になったわけですが。)また花代さんが、昔に芸者修業を積んだのは向島で、まあお近くです。さらに吉増さんのお住まいの佃、月島も、江東区ではなく中央区ですが、墨田川の流れに沿っていけばご近所ですよ。(またこれは偶然でしょうが、花代さんもちかさんも、昨年に近美で開催された吉増さんの展覧会をご覧になって、感銘を受けたよし、まあこの顔ぶれ、というのも必然?かもしれませんね。)

 カニエ・ナハさん、今回はタイポグラフィが専門のデザイナーの大原大次郎さんと組んで、言葉を提供し、そしてふたりで「のれん」を作って、それを地元の商店や公共スペースに17点掲げる、という試みをやってます。その言葉の出典は、MOTの所蔵する現代アート作品だったり、深川ゆかりの芭蕉の俳句だったり、と様々ですが、会場では映像で紹介された「のれん」作品、はい、イベントの帰りに歩いた深川資料館通りで見つけましたよ。田巻屋というお店です。デジカメでパチリ、です。

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 この「のれん」、書かれているのは芭蕉の俳句です。右から左へ、「なかやまや こしじもつきは またいのち」と読めます。「京呉服の店」の田巻屋、その「たまきや」という四つの音が、はい、確かにこの俳句には入ってますね。いや、芭蕉の句作品からこれを見つけるのは大変だったとか。それはそうでしょう、いや面白い(笑)。

 花代さんの作品の展示は、この集会所のお隣の「赤い庇の旧印刷所」でやっていますので、帰りに鑑賞しました。「第三次性徴」というタイトルがなにやら意味深ですが(笑)、インスタレーションは廃墟がモチーフでしょうか。清澄庭園の座敷で踊る花代さんの動画も上映されていました。

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 トークの最後に、僕もこのイベントの感想をお話したのですが、地縁ということでは、江戸期以来の深い歴史があるこの地の特性をうまく活かした企画じゃないでしょうか、と申し上げました。これと同じ狙いで、国立西洋美術館や都美のある上野や、世田谷美術館のある砧や、近美の竹橋で試みても、さあうまくゆくかどうか。

 お別れの引用句、吉増さんの初期詩篇から、としましょう。

「帰ろうよ
 獅子やメダカが生身をよせあってささやきあう
 遠い天空へ
 帰ろうよ」

                                  (吉増 剛造   「帰ろうよ」 第一詩集『出発』より)

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