林浩平の《饒舌三昧》

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zoom RSS 砂澤ビッキ展を葉山で観ました+中原中也の会、ヨコハマにて

<<   作成日時 : 2017/05/26 00:48   >>

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 眠たさを こらへて春を 惜しみける      (長谷川 櫂)

 長谷川櫂、第七句集『初雁』の一句です。五月も下旬、惜春というよりも初夏の気分です。入梅も近いかな。さあ櫂さん、このあたりから芭蕉七部集でいえば「炭俵」の巻の、「軽み」の句境に入ったでしょうか。滑稽と人情の要素も出てきましたね。

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 現在、神奈川県立近代美術館の葉山館では、「木魂(こだま)を彫る」と題された砂澤ビッキ展を開催中です。砂澤ビッキ(1931〜1989)は、アイヌの両親のもとに生まれ、アイヌの伝統的な木彫の技法を基礎に現代彫刻の世界で活躍しました。

 某日、久しぶりの葉山を訪ねます。少し雲が出てましたが、初夏を思わせるお天気。葉山の海岸は夏の気分の先取りです。

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 美術館のレストランで、ご自慢のシーフードカレーのランチでもよかったのですが(笑)、新宿のデパ地下で、なだ万のお弁当を購入して持参してました。浜に面した四阿(あずまや)でおいしく頂きました。さあ鑑賞してきましょう。作品は展覧会図録を接写します。

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 最初のブースには、ナラの大木を彫った「神の舌」、2メートルを越す高さです。もうひとつの大作は、「風に聴く」、アカエゾマツとカツラが素材。さらに見てゆきます。

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 順に、1.3メートルのクルミの木を彫った「北の王と王妃」、3メートル近いナラの木の「TOH」、そして横長の二体の抽象人体の「TOH2」です。

 そもそも僕がビッキ作品に興味を持ったのは、2008年の夏でした、吉増剛造さんの北海道立文学館での展覧会に出席するために札幌を訪ねた際、ちょうど道立近代美術館で「ビッキ 素描の世界」展をやっていたのでそれを見たからです。デッサン作品と一緒に展示されていた「午前三時の玩具」シリーズに強く惹かれたのですね。どれも40センチ前後の小品ですが、虫や小鳥のような、これら木製の玩具たちの放つファンタジーのファンになりました。今回も展示されていますが、うーん、期待したほどの数は出ていません。

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 「午前三時の玩具」、せめてその絵葉書は所持しておこうと、3枚購入しましたので、それも接写した次第。さらにビッキの素描もご覧ください。裸婦デッサンも独特のタッチです。

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 素描は、シュルレアリスムの自動筆記の手法を髣髴とさせると図録の解説は言います。そう、年譜を見ていて、興味深いのは、1953年ころ、鎌倉に滞在して、澁澤龍彦の家に出入りし、現代俳句の加藤郁乎、舞踏の土方巽らと交友、とあるくだりです。そうそう、作家の武田泰淳の小説『森と湖のまつり』の主人公はビッキをモデルにしたものだそうですね。

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 これは「四つの風」という野外彫刻で、札幌芸術の森野外美術館に展示されています。ただ、材料がアカエゾマツ、つまり木ですから、朽ちてしまい、このうちの3本は倒れているとのこと。僕は、2008年の札幌滞在の折には、この野外美術館を訪ねて、ビッキのこれを見たのですが、あれ、何本立っていたかな、記憶があいまいです。
 まあこの野外美術館、当時のお目当ての中心は、世田谷美術館でも個展があったダニ・カラヴァンの「隠された庭への道」で、この概念彫刻?の印象はいまも鮮明です。

 さてもうひとつの話題です。「中原中也の会」の第21回研究集会が、ヨコハマは「港の見える丘」にある神奈川近代文学館のホールで開かれました。ちょうど文学館で開催中の正岡子規展の最終日でもあります。お隣の薔薇園では各種の薔薇が妍を競っていましたね。
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 今回のシンポジウムのテーマは、シリーズ戦後詩人と中也の一環として「大岡信と中也」です。このテーマが決まってから、4月5日の大岡さんの訃報があったそうですが、山村暮鳥が専門の竹本寛秋さんと、中也の会の事務局長でもある加藤邦彦さんが、丁寧に大岡信の中也受容を博捜されての発表でした。そして講演は、詩人で源氏研究でお馴染みの藤井貞和さんが、「近代詩と翻訳、現代詩と言葉」の題でトークでした。(貞和さんとお喋りしてましたら、「今度、岩波文庫から『源氏』の新編を出すんだよ。コウヘイさん、宣伝してよね」ですので、はい、宣伝いたします(笑)。)

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 集会の終了後は、中華街に繰り出しての打ち上げです。今回は、中也賞を受賞した女性詩人のかたがたも何人か参加くださり、賑やかでした。

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 貞和さんは、野崎有以さんと、それから僕は三角みづ紀さんや野崎さんとチーズ、でした(笑)。

 お別れの引用句、ビッキ展の図録に、詩人で翻訳家の管啓次郎さんが書いた文章を引きましょう。昔はハワイ大学にも留学したことがあり、自然界の事象には繊細な管さんならではの、濃やかなビッキ理解に立った文章です。シンプルに一行だけを。

「砂澤ビッキはその圧倒的な力量で、ヒトと地水火風との媒介者としての作品、を作り続けた。」

                                    (管 啓次郎  「垂直に立てられた舟のように」)

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コメント(4件)

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ビッキ展 忘れていました!まだ間に合うので週末に出かけます!
あけみ・る
2017/06/08 12:44
「あけみ・る」さま、ビッキ展、行かれましたか、これは一見の価値ある企画展だったことでしょう。
ミニヨン
2017/06/13 21:19
「ベン・シャーン展」以来の葉山館でした。イサムノグチのこけしも引っ越してきていました。展覧会は会場(のみではないでしょうが)によって全く違う雰囲気になることが多いのですが、ぴったりの葉山館でしたね。(借景の船も見えたりして)
『森と湖のまつり』のこと知りませんでしたので、筑摩文学全集に収録されていたのを見つけて、目を通す準備だけはしています。情報ありがとうございました。
千葉市美の「椿貞雄展」も見逃さないようにしたいと思っています。
あけみ・る
2017/06/15 12:51
ビッキ展、行かれましたか、それは良かったです。『森と湖のまつり』、僕も「目を通す」くらいはしておきましょう(笑)。
ミニヨン
2017/06/25 16:21

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