林浩平の《饒舌三昧》

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zoom RSS 川村記念美のヴォルス展、これは素晴らしい+高橋順子さん『夫・車谷長吉』刊行されました

<<   作成日時 : 2017/06/04 00:32   >>

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 昼蛙 どの畦のどこ曲らうか     (石川 桂郎)

 俳句の師匠は石田波卿で、小説の師匠は横光利一だったそうです。理髪師を職業とした時期もあった、というのがなんだかいいですね(笑)。伸びすぎた言葉の髪の毛を整えるように、句作したのでしょう。このコーナーには初登場の俳人ですが、注目してみましょう。

 佐倉にあるDIC川村記念美術館では、「ヴォルスーー地上から宇宙へ」展をやっています。7月2日までです。ヴォルスVOLS((1913〜1951)の我が国での本格的な回顧展は、1980年の北九州市立美術館の展示以来だそうです。ずっと気になる作家でしたので、京成線に日暮里駅から乗って、佐倉に行ってきましたよ。駅前からは例によって、美術館の送迎バスです。

 だいたいいつも、ここを訪ねる際には、デパ地下で弁当を購入して持参、池に面した藤棚の下のベンチに腰掛けてまずはランチタイムです。この日は、穴子と浅利メシのお弁当にしました。

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 ヴォルスの作品はこれまでに断片的に目にする機会はありました。ヴォルスの名も、1950年代のいわゆるアンフォルメルのムーヴメントのなかで紹介されることが多かったでしょうが、それはそれとして、僕にはアンリ・ミショーと並んで、ずっと気になる作家のひとりでした。さあじっくり鑑賞しましょう。嬉しいことに、この企画展のコーナーは「写真撮影は自由です」、とありますね。帰りがけにご挨拶をした担当学芸員の光田由里さんのお話によると、「幸いにも、といっていいのでしょうかしら、亡くなったのが早かったので、版権の問題がないのですよ」とのことですが、寛大な配慮はありがたいです。張り切って、おおいに画像を撮ってきました(笑)。ご覧いただきます。

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 ドイツ人であるヴォルスが、パリに出てきた当初に手を染めたのが写真撮影だったとは今回初めて知りました。ちょうど1930年代ですから、シュルレアリスム運動が燃え上がっていた時代です。シュルレアリストらとも交友があったので、マックス・エルンストのポルトレも撮っていますね。三枚目です。それにトリの胎児?を撮ったのも奇妙にシュールな味わいの佳作です。

さて続いては、グワッシュ、要するに不透明な水彩の技法で描かれた一連の作品です。ヴォルスといえばお馴染みの「蜘蛛の糸のような描線」が不思議に喚起力のあるフォルムを作り出す画像をじっくりご覧ください。

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 上から順に、「作品、または絵画」、「無題」、「トリニダード」、そして「植虫」です。だいたい1940年代の作ですね。そして以下にお目にかける作品など、見ていて、ゾクゾクと鳥肌が立ったほどの傑作でした。

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 順に、「コンポジション」、「稜堡」、「遥かに見た岸辺」と続きます。これらは、じっと見ていると、欲しくなってしまいます。洲之内徹氏は『気まぐれ美術館』のなかで、「本当にその絵に魅入られたのなら、それを盗んでやろうと思うはずだ」とか言ってましたが、まったくその通り、と思いました、ヤバイですが(笑)。この絡まりあった描線の造形するもののどこに、その魅力があるのでしょう。本展の監修者の千葉成夫さんが、図録の文章のなかで、ヴォルスの「切迫感」というものに言及していますが、なるほどそれは首肯できます。

 また油彩も手掛けていますね。「ニーレンドルフ」と「閉路」をご覧ください。

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 これらも面白いです。しかし、何をやらせても出来る、多才ぶり、という感じではありません。やはり「切迫感」が関わりますか。そして戦後は、サルトルたちとも交流を持ちながら、作品はもっぱらドライポイントの版画のほうに進んでゆきます。以下、「かぶと虫の果実」、「人の住む海辺」、「なぐりがきの対角線」です。

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 これらのグアッシュ作品もドライポイント作品も、ここ川村記念が所蔵しているのがかなりあるのですね。いやいや、見応え十分でした。これはぜひお薦めです。

 ところで話題は変わって、この5月17日は、2015年の同日に亡くなった作家の車谷長吉さんの三周忌でした。早いものです。その三周忌の記念に?と、文芸春秋から奥様だった詩人の高橋順子さんの『夫・車谷長吉』が刊行されて、僕も頂戴しました。さっそく読了、あの「毒虫」を自称した特異なキャラの持ち主だった長吉さんを偲びました。

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 順子さんの著書には、結婚前に車谷さんから送られた絵手紙も載せられていますが、なかなか絵心がありますね。それに独特の書体が面白いです。先日の「放送大学」の主題に引き寄せていえば、車谷長吉もまた、「現代の文人」のひとりだったでしょう。反骨精神、まさに文人のそれです。一度、車谷さんと順子さんの住む向丘のお宅にお邪魔したことがありましたが、その際に頂戴した著作へのサインをお目に掛けましょう。

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 お別れの引用句、ヴォルスの言葉からとしましょう。ヴォルスにも「文人精神」は生きてました(笑)。

「神は人間よりも蠅のほうを好んでいる
ということはありそうなことだ。」
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