林浩平の《饒舌三昧》

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zoom RSS 福田尚代さん、新作が都美の企画公募展で+ブリューゲル「バベルの塔」展も見ました

<<   作成日時 : 2017/06/14 09:03   >>

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 人声も さびさびとして 青葉鯉     (安東 次男)

 入梅前の風景でしょう、新緑のきれいな滝壺でしょうか、登山客の話し声も寂しそうに響いてくるなかに、水に游ぐ鯉のシルエットを見つけた、という一句と解しました。あんつぐさん、ここに「季節」を見つけましたね。

 美術家の福田尚代さんの作品や活動は、このブログでこれまで何度も取り上げてきました。昨年末には平凡社から瞠目すべき回文集の『ひかり埃のきみ』が刊行されて、その驚嘆の言語実験については、僕は書評でおおいに顕揚しました。その福田さんの新作が、東京都美術館のギャラリーBに出展中とのご案内をいただいたので、鑑賞に赴きました。「エンドロール」と題された作、雁皮紙と墨が素材です。デジカメで撮りました。

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 なにやら棺を連想される容器に収められていますね。ノートの亡骸、という印象です。

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 作品の制作ノートによると、大切な人が亡くなり、残されたノートに記されたおびただしい言葉を新しくノートに書き写し、そのノートを素材にして作った、ということでしょうか。福田さんは、これまでも、記憶のなかの大事な書物や言葉の世界をモチーフに制作を続けていますが、この作にも、人が書き残す言葉、ほんのあえかな存在でしかないそれらへの愛情が生きているように思えます。

 さて、今回の展示は、都美の企画公募を通過した「海のプロセスー言葉をめぐるアトラス」展に参加してのものです。この企画の狙いというのが、チラシの文面だけではいまひとつよくわかりませんが(笑)、海のイメージに関わる作が他には多かったですね。中根秀夫さんのヴィデオ映像作品「もういちど秋を」、こんな感じでした。

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 また平田星司さんの「海のプロセス」、こちらはわかりやすいです(笑)、海辺に漂着したガラス片や砂浜の砂で構成されたインスタレーション作品ですね。

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 そしてもうひとりの参加者、写真家の井川淳子さんの「バベル」です。そう、ちょうど都美の本館で開催中の「ブリューゲル「バベルの塔」」展で本物が出展されていますあの作品を接写した紙焼き写真を何枚も海に沈めて、それを撮影したゼラチンシルバープリント作品です。面白いコンセプトですが、映像自体の喚起力も強いですね。

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 訪ねた日には、関連イベントとして、美術館のスタジオで中根秀夫さんの映像作品の上映会と、ゲストで招かれた埼玉近美の学芸員の梅津元さんによるスペシャルトークがありました。中根さんの上映会の時間は、その本館のブリューゲル「バベルの塔」を観に行っていたので、梅津さんのトークから参加した次第です。

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 このトークがなかなかユニークな試み、出展作家に直接関係のない、海をモチーフにしたミュージックヴィデオが流れたり、また梅津さんがこだわりを持つ批評家の言葉が引かれたりします。そのなかで、詩人で批評家だった故菅谷規矩雄氏の文章に言及があったのにはビックリでした。菅谷さん、面識はないままに亡くなってしまいましたが、詩論家として鋭い論考を残しています。特に韻律論などに。またこのブログでは時々登場します詩論家の北川透さんの盟友でもありました。芸術学の専門のかたから、その仕事に関心を持たれていたとは、菅谷さんも喜んでいるでしょう。

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 都美の本館では、現在都内の各所に宣伝ポスターが見られますね、ブリューゲル「バベルの塔」展をやっているので、これは観ておかねば。下は、ピーテル・ブリューゲルT世本人の肖像画です。副題に、「16世紀ネーデルランドの至宝―ボスを超えてー」とありますが、これらを所蔵するオランダのボイマンス美術館が改装するのでその間、「バベルの塔」や他のブリューゲル作品や、ブリューゲルがお手本とした当時の大人気画家のヒエロニムス・ボスの作品が多数お披露目されています。

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 順に、「大きな魚は小さな魚を食う」、「聖アントニウスの誘惑」、「金銭の戦い」と版画作品、いずれも原画はブリューゲルが描いています。あのボスの「悦楽の園」の影響歴然ですね、確かにいかにボスの奇想が当時のヨーロッパ中世を魅了したか。「農民画家ブリューゲル」のイメージが改まりました。さてそのボスの作もどうぞ。

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ボスの油彩は「放浪者」と題されていますが、なかなか味のある作ですね。当日は日曜だったので、さすがに観客数も多くて、前の列のひとの頭越しの鑑賞でしたが。

 お別れの引用句、会場に掲示された福田尚代さんの制作ノートから、としましょう。含蓄に富んだ一文です。

「ひとりの人間が一生のあいだにつづる膨大な文字とは、はてしのないたったひとすじの息ではないか。ふりむくと、空に消えたはずのささやきがみちあふれ、さざなみを生み、ゆらめいていた。」
                                 (福田 尚代  「エンドロールノート」)

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