林浩平の《饒舌三昧》

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zoom RSS DIC川村記念美術館では林道郎さん講演会を聴きました

<<   作成日時 : 2017/08/09 03:27   >>

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 黙禱の 果てなき秋の暑さかな   (松本 邦吉)

 立秋となってもなお夏は本番で猛暑が続きます。この句、その「秋の暑さ」を詠いますが、句の眼目は「黙禱」ですね。ということは、8月9日の長崎原爆忌の情景でしょう。あるいは、8月15日、松本さんが他の句で使う言葉でいえば「敗戦忌」の情景でもあります。佳い句です。

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 この展覧会ポスター、ちょっと見づらいですね、使われたジャスパー・ジョーンズの作品「ハイスクールの日々」のアップと一緒にご覧いただきます。(鉛と鏡が素材です。)はい、ここは、千葉県は佐倉市にあるDIC川村記念美術館の入り口です。現在、8月27日まで、「静かに狂う眼差し―現代美術覚書」展を開催しています。

 この企画展がユニークなのは、川村が所蔵する現代アートのコレクションから、美術史家の林道郎さんが独自の観点からセレクションをして展示した、という点です。批評家のキューレーションによる展覧会というのは、アメリカなどではあるでしょうが、日本では珍しいですね。まあ道郎さんは、これまでにもここ川村でのロバート・ライマン展や中西夏之さん展では頼もしい助っ人ぶり?を発揮してきましたので、こうした企画が誕生したのも頷けます。

 道郎さんのコンセプトによる今回の企画展、全体を四つのパートに分けて、それぞれのテーマに沿って展示を行ったよし。さて僕が訪ねた5日土曜日は、第一章の「密室の中の眼差し」に関して、道郎さんによるレクチャーと作品解説の回でした。実は7月8日のオープニングには、道郎さんによるギャラリートークがあって、なんと130人もの聴衆?観衆?が集ったとか。普通はせいぜい2〜30人でしょう。道郎さんからうかがうには、「A某さんや美術評論のMさんも来てくれてて、マイッタな(笑)」だったそうです。そりゃそうでしょう。僕は、ちょうどその日は某大学での特別レクチャーで、吉増剛造さんの「怪物君」などについてしゃべっていたので参加できなかったのですが。

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 二階の展示フロアの一画に会場が設営されていて、この日も大勢が集まります。「へええ、現代アートのファンってこんなにもいるのかなあ」と楽天的な気分にもなりましたが(笑)。まず道郎さんから、今回の企画展が立ち上がった経緯やその基本コンセプトなどが解説されて、さて「第一章」として展示された作品を順にパワーポイントで投影しながらの説明です。ブラッサイが撮ったマティスと裸婦モデルの写真です。これは印象的な一枚ですよ。確か以前にここであった「マティスとボナール」展にも出展されていましたね。

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 道郎さん、このブラッサイの写真作品をいわばイコノロジー的に図像分析、なるほど面白いです。話はそこから「個室の夢」というテーマに展開して、ブルトンや瀧口修造の書斎の問題にもなります。シュルレアリストは、とにかくお気に入りのオブジェを収集するわけです。瀧口も「物々控」というエッセイで語っているように、「ガラクタに近いものから芸術作品にいたるまで」その「個室」に集めます。そして「個室」=「箱」ということで、ジョセフ・コーネル登場です。なるほど道郎さんの説のように、コーネルとシュルレアリスムとの密接な関係というものは否定できませんね。今回の展示、コーネル作品は16点!あります。

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 しかし戦後の大量消費社会の出現で、「個室」は主の好みや趣味の範疇を超えて、モノが溢れ出す、というわけです。ここにポップアートが絡みます。道郎さんが注目するのは、リチャード・ハミルトンです。うーん、確かにこのイギリス人作家はなんだか興味深い存在です。デュシャンも一目置いたようですし、僕などはあのビートルズの「ホワイトアルバム」のデザイナーとして認識していました。さて話題はそこからクレス・オルデンバーグという、こちらも面白そうな作家(この人のことは、以前に道郎さんらとやった研究会でもしばしば言及されましたが)のことや鏡のテーマなどに展開しますが、詳しくは、今回の展覧会カタログも兼ねる格好で刊行された道郎さんの書き下ろしの『静かに狂う眼差し』(水声社)の記述をお読みください。

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 さて、そんな感じで90分にわたる講演は終了しましたが、この後も12日には第二章「表象の零度ー知覚の現象学」、19日には第三章「グレイの反美学」、26日には第四章「表面としての絵画ーざわめく沈黙」と、毎土曜日ごとに道郎さんの講演会が続きます。実際の展示を見ても、著作にざっと目を通しても、第三章の「グレイ」の問題を扱ったパートに僕はおおいに惹かれた次第ですが、残念ながら今月半ばから紀州に里帰りで、来られません。終了後には、著書を購入したファンからサインのリクエストでした(笑)。

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 さて、展覧会の模様を画像でお伝えしたいのですが、今回の道郎さん本、展覧会カタログを兼ねるには、作品画像の数があまりにも少ないです。そこが残念。まあ何枚か接写して紹介します。

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 ロイ・リキテンスタインの「青い床の室内が描かれた壁紙」、そして「鏡」シリーズの一枚です。道郎さん、今回の展示の隠しテーマに丸?円?があるとのことでしたが、なるほど、そうですね(笑)。続いてグレイの章で、赤瀬川原平の「真空の踊り場、四谷階段」と「公務のドローイング」です。はは、「四谷怪談」にかけてます、いわゆるトマソン芸術のひとつ。こうした一連の原平さん作品、面白いですね。最後は、問題の!リチャード・ハミルトンの「型押しされた5つのタイヤ」、確かに丸のモチーフです(笑)。

 お別れの引用句、道郎さんの本から、というのはあまりに安直でしょう(笑)。ちょうど読んでいた由良君美先生(はい、いちおう教室で英語の授業を受けたことがあるので「先生」です)のエッセイに引用された一節を引いておしまい、とします。

「高等芸術は下等芸術の増幅から生まれる。」
                                               (ヴィクトル・シクロフスキー)

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