林浩平の《饒舌三昧》

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zoom RSS 高志の国文学館では瀧口修造の詩を講演、墓参も+おわら風の盆を体験しました

<<   作成日時 : 2017/09/06 01:23   >>

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 はくれんへ やはらかき土 踏んでゆく  (松本 邦吉)

 白蓮は晩夏の季語です。秋も近くなり、真夏の日照りで乾いていた土も柔らかくなったころ、白蓮を眺めようとしたわけですね。白蓮が白い鳥に変身するという幻影を詠んだ句に、「白はちす夕べは鷺となりぬべし」がありました。こちらは三好達治の作。ともに詩人の読んだ俳句です。

(追記)ここをご覧くださった松本さんご本人から、「はくれん」は白木蓮で春の季語です、白蓮は「びゃくれん」ですよ、とのご教示がありました。いやはや、恐れ入りました。無智を曝してしまいました。確かに、「やはらかき土」ですから、ここは秋とムリヤリ解くよりも、空気の潤う春と読むのが当然でした。まあしかしせっかくの詩人の俳句競演?ですから、ここはこのままにさせてください。

 さて9月2日には、富山の高志(こし)の国文学館からお招きいただき、富山出身の瀧口修造の詩について講演をしてまいりました。初めて北陸新幹線に乗って富山市まで。お天気もまずまずで快適でした。文学館、市内の城址公園の近く、閑静な地に建ちます。モダンな建築。その報告をまず。

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 シュルレアリストとして純粋な詩的世界を生きたひと瀧口修造は、詩人でもありました。しかし彼の詩の世界は、『瀧口修造の詩的実験1927〜1937』にしても、最晩年の「手づくり諺」にしても、一般的な文学テクストとして読むには、はなはだ厄介です。さあそれをいわゆる文学講演会でのお話のなかで、現代詩の表現などにあまり馴染んではいないだろう聴衆の皆さんにどう説けばいいのか、これは大変な難題です。正面からのテクスト解読、というのは潔く諦めて(笑)、故大岡信さんの恰好のガイドでもある『ミクロコスモス瀧口修造』に出たふたりの往復書簡などを手掛かりに、搦め手から『詩的実験』に迫りました。

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 また瀧口という人物や彼の人生についても、概略を伝えなくてはなりません。インターミッションと称して、1958年のヨーロッパ旅行の逸話なども織り交ぜながら、師であるアンドレ・ブルトンとの劇的な対面のシーンを紹介したりして進めます。ブルトンの部屋に多数収集されたアフリカの土俗的な仮面や悪魔祓いの人形などにも話題を振って、「10年ほど前のブルトン遺品の競売では、これらをたくさん落札したポップミュージシャンがいました。誰だったでしょう? はい、マドンナでしたね(笑)」などと脱線も交えますが、これは麗しい逸話ですよ。

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 さらには、瀧口の夢記述テクストも、詩作品です。「夢三度」の一篇を紹介しました。そしておしまいに、「手づくり諺」のいくつかをちょっと分析し、瀧口晩年のデッサンやデカルコマニーを画像で紹介、「書く」ことが「描く」ことにつながったわけです。結論としては、まあこれは僕の持論ですが、詩人瀧口修造における言葉の物質化の欲望、というものを確認して、お開きでした。

 館長の中西進先生と講演の後にしばらくお話が出来たのは幸いでした。万葉集学の泰斗である中西先生に、先日からこのブログで話題にしています、有間皇子の墓の問題のことや、例の野島に歌碑のある万葉歌のことなどもお伝えしました。中西先生、「ああ、あの歌は女性の作ですね」とのこと、もっとお話をうかがいたかったですが、明日は四国で講演がおあり、とか。そのまま京都のご自宅に帰られました。またお目にかかる機会をぜひ、と思います。

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 この日は9月2日、つまり地元の富山では、あの「おわら風の盆」の二日目なのです。これはぜひ体験したいところ。ちょうど高志の国文学館の企画展示として、まさに地元である八尾(やつお)出身の画家で、「おわら風の盆」の踊り子の姿を昭和の初期から描き続けた林秋路(あきじ)さん(1903〜1973)の個展を開催しています。この秋路さんのお嬢さんが、踊りの中心地である上新町のご自宅の二階をご提供くださるとのこと、それは特等席です。「それでは」というので、文学館の荻布(おぎの)副館長さんや事業部長の生田さん、今回特にお世話になりました、事業課長の三津島さんや学芸員の皆さんたちとご一緒に、「おわら風の盆」を観てきました。

 夕食後、JR高山本線に乗って、富山駅からいくつか先の八尾駅まで。車中も駅前も相当の人出です。翌日の新聞報道では、11万人の参加者だったよし。いやこのイベント、想像したよりもはるかに大規模、各地区が支部に分かれて、それぞれ独自の振り付けの踊りを見せるとか。ちょっと雨が降りましたが、幸いすぐに上がり、林さん宅にお邪魔します。二階の部屋には、秋路さんの絵が飾られていますね。

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 ただ、上新町で、一般のひとも加わっての輪踊りがスタートするのは10時からだとか。少し時間があります。それじゃあ、というので、他の地区での、こちらは地元のプロ?の踊り手による女性と男性、それぞれに独特の振り付けがなされた「おわら」踊りを鑑賞してきました。これが良かった。鳥追い笠の女性らの手ぶりの優雅さも素敵ですが、「かかし踊り」ともいわれる男性陣のシャープな身のこなしも見せます。なんでも、京都?から花柳流の師匠を呼んで、昭和の初期あたりに振り付けの改良を行ったとか。道理で洗練された所作なのでしょう。

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 さあ一般のひとも踊りの輪に参加できる輪踊りが始まりました。林秋路さんのお住まいだったお宅の二階からそれを見物します。皆さん、なかなか上手に手足を動かしていますね。なんでも富山県では、小学校時代からこの踊りの訓練を受けるとか。フォークダンスの最後にこれを踊るともうかがいました。三味線や太鼓に混じって、胡弓の音色が哀愁を誘います。いやあ、得難い体験の一夜でした。秋路さんの絵は、町の随所に使われていますね。

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 さて、翌日は、富山市の郊外の寒江村の龍江寺に、一週間前に新しくオープンした富山県美術館の副館長の杉野秀樹さんのご案内で、瀧口修造の墓参りをして、そのあとには県美を見学してきました。それも報告の予定が、画像掲載の限度量を超えそうですので、それは次回、ということにさせてください。今日の〆は、今回の講演を準備くださり、この夜の「おわら風の盆」をご一緒できました高志の国文学館のスタッフの皆さんと、お世話になった林秋路さんのお子さんおふたり、淑子さんと章一さん、皆さんとの記念写真画像で、としましょう。

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 お別れの引用句、やはり瀧口で行きましょう。

「石は紅さして、千年答えず。」
                          (瀧口 修造  『手づくり諺』)







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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
高志の国文学館での講演、お疲れさまでした。聴講者が多く盛会だったようですね。
講演後、中西先生ともお話しになったようですね。先生はこの8月に米寿を迎えられたはずですが、きっとお元気だったことでしょう。

また夜には八尾に足を伸ばして風の盆体験と、羨ましくなるような旅でした。一度かわさきや春駒などの踊りを、哀調を帯びた胡弓の音色とともに見てみたいと、ずいぶん前から考えていますが、なかなか実現しません。
sakaho
2017/09/07 17:17
sakahoさま、コメントをありがとうございます。中西先生、お元気でしたよ。例の『狂の精神史』の話題にもなりました。ただ、古代文学や万葉集のことで立ち入ったお話をするには時間が限られていたのが残念です。おわら風の盆、ぜひ一度、ナマを体験なさってはいかがでしょう。ただし、十万人単位の人の出ですから、宿舎はかなり前から手配される必要がありますね。僕もまた行きたいです。
ミニヨン
2017/09/07 19:04

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