林浩平の《饒舌三昧》

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zoom RSS 那覇の沖縄県美での「詩人吉増剛造・涯テノ詩聲(ウタゴエ)」展オープニングに出席しました

<<   作成日時 : 2018/05/01 00:51   >>

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ゆく春の 耳掻き耳になじみけり      (久保田 万太郎)

 面白い句ですね。俳人の小澤實氏が蕪村の「ゆく春やおもたき琵琶の抱きごころ」を挙げて、「琵琶」をずっと軽くしていくと「耳掻き」に至る、と評しているのには賛成です。実にゆったりとした平穏な気分です。

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 那覇市にある沖縄県立博物館・美術館、向かって左側が博物館、右側が美術館です。この建築物は、琉球王朝時代の陵墓?をモデルにしたのでしょうか、なにやらトーチカや要塞みたいな堅牢なイメージ。さてここで、4月27日から6月24日まで、「詩人吉増剛造 涯テノ詩聲(ウタゴエ)」展が開催されています。昨年の足利市美術館での企画展が巡回したものですが、美術館の展示空間が足利とはまるで違います。さあどんなインスタレーションとなったでしょう。27日の朝9時半から、オープニングセレモニーがあったので、前日より那覇を訪ねて、それに参加してきました。その模様をレポートします。

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今回の展示も、前回同様に足利市美の篠原誠司さんが中心となってのコンセプト作り、設営作業は、当日の午前1時までかかったよし。(ですから前夜、小生は吉増さんとサシで、国際通りをちょっと入ったお店で一献していました。「ふたりで呑むのは北上以来だね」、はい、ありがたい貴重な時間でした。)無事にオープニングセレモニーが開かれます。館長さんに吉増さんのご挨拶があった後、テープカットでした。

さてその後は引き続いて吉増さんの講演、とプログラムにはありますが、そんな堅苦しいものじゃありません。ギャラリートークですね。この美術館はとにかく展示空間が広くて大きい。それを活かしたインスタレーション、それには元大岡信ことば館館長で美術家の岩本圭司さんが協力されたそうですが、吉増さんの詩の言葉がオブジェとなってそこここに出現しています。そこを吉増さん、ゆっくり歩き、立ち止まって、作品解説です。一般の入場者のかたたちも一緒に、その語りを聴きながら作品鑑賞でした。

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 二重露光写真作品が貼られた前で、吉増さん、「これは石狩河口に捨てられた廃バスだ。それにアリゾナの砂漠の映像が重なってるんだね」という具合に、写真誕生にいたる舞台裏を解説されますから、これは興味深いですよ。この美術館ならではの、空間の広さや開かれかたが、吉増さんのギャラリートークに適しているようです。

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 薄い銅板のうえに文字を書いて、その輪郭を鏨(たがね)で打って制作する銅板文字作品?、これは彫刻家の故若林奮さんとのコラボレーションです。薄い銅板をきれいにつないでロール状に巻いていますが、この銅板をつなぐ作業、それから吉増さんの使う鏨自体も若林さんの手作りです。

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 今回も、最初の足利市美のものが巡回しているので、吉増さんが影響を受けた画家や文学者の作も並びます。良寛の書の前でトークする吉増さん。芭蕉や蕪村の真筆も出ていました。一連の「怪物君」シリーズもズラリと並びますが、映像作家の鈴木余位さんが制作した、「怪物君」画像のインスタレーションも投影されています。床であったり、垂直の映写幕であったり。最新作の「火ノ刺繍」も出展されていました。画面はさらに過激になって、火で燃やそうとした痕跡もあります。同名の『火ノ刺繍』というエッセイ集、たいそう分厚いものとなるよしですが、このGW明けには誕生するでしょう。乞うご期待。

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 吉増さんは、ここ沖縄とはかねてより密接な関係を持ち続けています。白い大きな顔のミロクの仮面も出てました。それに今回は、やはり沖縄と縁の深かった写真家の東松照明さんのカラー写真も特別出品として出ています。吉増さん、写真家としては先輩にあたる故東松照明さんをたいそう敬愛されていました。また映像が投射されている足元には、たくさんの宝貝が並べられていますよ。

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 さておしまいのコーナー、これは足利のときにはなかったものです。去年に吉増さんが、トリオの若いアヴァンギャルド・ロックバンドである空間現代と一緒に、フランスやスイスでセッションを行った際の動画ですね。吉増さん、激しいサウンドをバックに「怪物君」の公開制作、さらには鏨でフロアを叩いてパーカッションでの演奏参加です。アイヌの使う道具であるパスィを頭に乗せている、というパフォーマンス、なんだか禅の高僧の悟りの仕草?のようでもありますね(笑)。

 ともあれ、展示の雰囲気など、お伝えできたでしょうか。沖縄の皆さん、たくさん運んでくださるといいですね。

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27日の夕方からは、吉増さんを囲んで、展覧会関係者の皆さんたちの懇親会でした。マリリアさんもお見えです。吉増さん、那覇にも知友の皆さんが大勢いるので、東京からのわれわれともども、賑やかで愉快な一夜でした。

 さて、上の最後の画像に注目ください。吉増さんの新著『舞踏言語』が前日の26日に誕生したので、担当編集者の志賀信夫さんが、ホヤホヤのこの書物を那覇に運んできてくれました。論創社から、定価3200円ですが、これはタイトルが示すように、土方巽や大野一雄、笠井叡さんなど、舞踏家たちの世界をめぐって、対話やエッセイや詩作品を残されていたものを集大成しました。僕は、吉増さんと笠井叡さんとの公開対話での司会役で出てますが、それ以外でもあれこれ、志賀さんのお手伝いのようなこともしたので、無事誕生、嬉しい限りです。

 では今日の引用句、そこに収められた一篇としましょう。土方に捧げられた詩篇です。

「廃星は淋しさに宿る/「さびしね」(そのね、……)のふかいところに
 ーーその木蔭にしばらく佇んでいた」
                              (吉増 剛造  「廃星は淋しさに宿る―土方巽氏に」)

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