林浩平の《饒舌三昧》

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zoom RSS 横浜美術館ではモネ展+エルメス、朝吹真理子さんテクストをプレゼント+詩集案内

<<   作成日時 : 2018/07/22 01:19   >>

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 炎天や 巌も渚も ましろなる      (松本 邦吉)

 このところの異常な猛暑続きには閉口ですね。最高気温が40℃を超えました。詩人の松本さんのこの句、『しずかな人 春の海』に収められていますが、まさにこの酷暑の真夏の海岸の情景です。全景、眩しい陽光でハレーションを起こしたみたい。八月もまだこれが続くのでしょうか。

 恒例の、わが家のリビングの掛け軸交換、夏の画にようやく掛け替えました。

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 画題には「軒端涼風」とありますが、要するに鮎が泳いでいる図、です。画家の名前も記されるのですが、達筆すぎて僕には読めません。しかし、いまの猛暑はこの絵くらいではどうにもなりませんね。

 さて、横浜美術館では、「モネ それからの100年」展が始まりました。13日の金曜日でした、オープニングに参加します。

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あのナダ―ルが撮影したクロード・モネ(1840〜1926)の肖像写真、風格を感じさせる容貌です。展覧会タイトルの「それからの100年」とは、モネが晩年の連作「睡蓮」の創作を始めてから約100年で、そのモネから現代の美術家たちが大きな影響を受けながら自作を創っている、というアートの歴史を踏まえたもの。ですから今回の展示は、モネの絵画作品29点に加えて、後世代の作家26名の66点で構成されています。

 現役の日本人アーティストも大勢参加しています。開展式に皆さん勢ぞろい(おや、岡崎乾二郎氏の顔だけありませんが)。紀州新宮の出身ということで存じ上げる写真家の鈴木理策さんもいました。理策さんとは後で会場でオシャベリしました。

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 モネの風景画がとてもいいです。展覧会図録を接写しましたので、紹介しています。順に、「サン=シメオン農場の道」(1864年)、「モンソー公園」(1876年)、「わらぶき屋根の家」(1879年)そして「海辺の船」(1881年)です。1870年代の半ばまでは、モネは印象派理論に忠実だったのですが、以降は抽象絵画めいたアプローチも大胆に取り入れてゆくそうです。

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順に、「ヴェトゥイユ、水びたしの草原」(1881年)、「ラ・ロシュ=ブロンの村(夕暮れの印象)」(1889年)、「テムズ河のチャリング・クロス橋」(1903年)、「霧の中の太陽」(1904年)です。もうこうなると、どんな風景を描こうとも、絵画を知覚の問題として捉えようとするモネのねらいは明らかです。アンドレ・マッソン(バタイユやミシェル・レリスの友人ですね)が喝破したように、「彼は印象派ではなく、あらゆる現代美術の生みの親ではないのか」、はい、その通りです。

 以下、モネの影響下にある作家たちの作品をどうぞ。

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 順に、エドワード・スタイケン「暮れなずむフラットアイアン・ビル、ニューヨーク」(1905年)、アルフレッド・スティ―グリッツ「ニューヨーク・セントラル・ヤードにて」(1903年)、そしてマーク・ロスコ「ボトル・グリーンと深い赤」(1958年)、ゲルハルト・リヒター「アブストラクト・ペインティング」(1997年)です。ロスコとリヒターは僕も大いに気になる作家。

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 写真家の鈴木理策さんの「水鏡14」(2014年)と同じく理策さんのヴィデオ映像作品「The Other Side of the Mirror」(2014年)。図録解説で学芸員の松永真太郎さんが書いているように、「「見る」という作業がはらむ不確かさ、意識のゆらぎがより生々しく映し出されている」といえるでしょう。次の福田美蘭さんの「睡蓮の池」は本企画展のために制作されたとか。高層ビル上階のレストランからの日没直後の夜景と窓に映りこんだ店の内観を描いたものですが、それがモネの睡蓮連作に似る、というのが面白いですね。そして1982年生れという若さの児玉麻緒さんの「IKEMONET」(2015年)。堂々たるパロディです。この企画展、9月24日まで。お見逃しなく。

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 作家の朝吹真理子さんが、芥川賞作『きことわ』から7年目で満を持しての次作『TIMELESS』を刊行したばかりです。なかの一節を、真理子さんご本人が朗読するのを、吉増剛造さんとの公開対話の折に(去年9月の写真美術館でのアラーキー展のイベントでした)聴いて感銘を受けました。そのくだりは、吉増さんの新著『火ノ刺繍』に収められていて読むことが出来ますよ。

 さてそんな次第で、目下また注目される朝吹真理子さんの書き下ろしテクスト、『彼女と Avec Elle』、これがなんと無料でいただけるのです!

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 はい、これ。エルメスのショップを訪ねて、「ください」といえばOKです。僕も昨日、新宿の伊勢丹のショップで頂戴しました。エルメス、太っ腹です(笑)。これ、タイトルで気付いたかたも多いでしょう、現在、国立新美術館で上映されている映画「彼女と」との競演?ですね。エルメスが制作したこの映画のほうも、申し込めば無料で鑑賞できるのですが、HPから応募してみたところ、すでに満員でした。なんでも観客参加型だとか。どういうカラクリでしょうか、気になります。

 さてこちらのテクスト、米田知子さんの写真とのコラボレーションでもあり、さらに英訳まで付いていますね。紙の質もいいです。こんな感じです。

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 米田さんの写真に登場する小物はみんなエルメス製品でしょうが(笑)、いや、エルメス、ほんとにオシャレなサービスを提供しますね。銀座のエルメス・ブティックの最上階には、アートフロアがあって、本格的な現代アートの企画展を行なってますが、今回は感服いたしました。

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 もうひとつ話題を。先日来、頂戴した詩集のなかに、珍しい?三冊があるので、紹介します。宗教学者の鎌田東二さんが『常世の時軸』(思潮社)を、写真評論が専門の倉石信乃さんが『使い』(思潮社)をそれぞれ刊行しました。

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 鎌田さんとは残念ながら、今にいたるにお目にかかったことはないのですが、その神秘思想や霊性問題、さらには平田篤胤をめぐる著作は何冊か拝読しています。その鎌田さんが詩集を、とは意外でした。連作詩篇「時の断片」などは、さながら古代神話をテーマにした劇画タッチの力編(笑)。

 また倉石さんとは、このところかけちがってご無沙汰ですが、以前は岬多可子さんも僕もご一緒に詩誌「ミニヨン・ビス」の同人仲間でした。これが最初の詩集ですね。「ミニヨン・ビス」に発表した「ホームシックネス」と「パラシュート・ウーマン」が収められていますが、ずいぶんと改作の痕が。シンプルな文体で、「わたし(私)」と対峙する世界へ挑みかかろうとするモチーフが初々しいです。

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 三冊めは、こちらは大ベテランの高橋睦郎さんの『つい昨日のこと 私のギリシア』(思潮社)です。睦郎さん、このブログでは最初の「折々の句」にはよく登場いただいています。80歳を迎えられた詩人が、若いころから深い影響を受けたギリシア(「ギリシャ」じゃないのですね)をモチーフにしての短詩連作です。

 そのなかの一作を引いて、今日はお別れとします。

「彼らは森を伐った 船をつくり 櫂を削った
 渚に下ろし沖へ漕いだ 見知らぬ島 初めての入江
 降り立って砦を築いた 先住がいれば 戈(ほこ)を交えた
 文明の始まりはいつも同じ 血腥く後ろめたい
 冒険と呼ぶ実は殺戮 植民と言い換えた侵略
 彼らの名はギリシア人 私たち人間すべての代名詞」

                                 (高橋 睦郎  「ギリシア人」)

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