林浩平の《饒舌三昧》

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zoom RSS 多摩美大美術館では「神仏人」展+松濤の吉増剛造展、岡野弘彦さんとでした+吉増さん新著「図書新聞」紙上

<<   作成日時 : 2018/09/10 18:03   >>

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 野ざらしの 賓頭盧尊者(びんずるそんじゃ) 秋暑し      (松本 邦吉)

 句集『かりぬひ抄』の「奈良三句」連作からです。古都奈良の郊外の道端に、ふと目をとめた仏像があったのですね。9月といっても、まだ十分に暑いです。尊者の像も暑がっているようです。(松本さん、句集の表記、「賓盧尊者」となっていて、「頭」が欠けていますよ。今回気づきました。)

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 多摩センターには、多摩美術大学美術館があり、これまでも若林奮さんなど多摩美に関係した作家の展示などを行なっています。このブログでも何度かレポートしました。そうした現代アートとは別にここではよく、民俗学や宗教に関わった企画展も続けられています。現在は10月14日まで、特別展「神仏人 心願の地」が開催されています。

 この企画展、兵庫県の加東市と多摩美が共催するものです。どういう経緯でタッグが組まれたかは知りませんが、加古川の東流域にあたる加東市、ここは、『播磨国風土記』が伝えるように、太古から開けた地域で、古代遺跡の他、古い仏教文化に関わる仏像などの品々も多く残しています。3月に定年退職をした恵泉女学園大学ですが、まだ研究室は使えるので、夏休みも時々ここ多摩センターには足を運んでいます。恵泉の学バスに乗る前に見学してきました。

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美術館のHPの展示資料紹介をコピーして貼り付けたのですが、こんなショボい画像しかありません。この企画展、入館料は300円で、京王パスポートカードを提示するとさらに100円安くなって、200円でOK。それは結構なのですが、館内撮影禁止、です。古い仏像や考古学資料、それも国の重文などのクラスではないのに、どうして自由な撮影を許さないのでしょうか。これは多摩美大と加東市におおいに抗議したい。ケチ!撮影させろ!(笑)

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 辛うじて、ネットでの画像検索で探し出しました。チラシやポスターに使われた二体の仏像をUPでどうぞ。朝光寺所蔵の木造千手観音立像、そして播州清水寺所蔵の木造毘沙門天立像です。

 さても、今回は加東市ですが、加古川流域のいわゆる播州平野のあたりは、古代から山陽道の交通の要路であるうえに、播州米(近年では山田錦ですね、日本酒で大人気)で知られるように、耕作に適した豊かな風土です、昔から文明度?は高かったのですね。現在は姫路市に編入されたそうですが、その播州生れの作家の故車谷長吉(ちょうきつ)さんの短篇小説には、郷里のこととして、古墳がたくさんある、という話が出てきます。以前から気になるところではありました。

 加東市にはいくつもの古刹があるのですが、なんといっても別格なのが、朝光寺でしょう。寺伝によると、インドから渡った法道仙人が、651年に開いたのだとか。ここを紹介しておきましょう。本堂は、室町期の密教仏堂を代表するもので、国宝です。それから鐘楼は重要文化財。多宝塔も立派です。また年季の入った石像もいくつもあるそうです。

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 それに加えて、地元界隈では知られた民俗芸能だそうですが、鬼追踊りが毎年5月5日のこどもの日にこちらの境内で演じられるとか。会場にはそのヴィデオ映像が流れ、登場する五匹の鬼の面も展示されていましたが、かなり大きな面で、迫力があります。画像で紹介しましょう。

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 加東市と朝光寺など、和歌山市から日帰りで訪ねることもできますから、今度紀州に帰省の際にでも、一度足を伸ばしてみましょう。

 さて話題は変わって、松濤美術館で今月24日(月・祝)まで開催しています吉増剛造展のイベントレポートです。この8日(土)には、歌人で国文学者、折口信夫晩年のお弟子さんでもありました、岡野弘彦さんをお迎えしての吉増さんとのトーク。大勢の聴衆のかたが集まりました。
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岡野先生、今年で94歳を迎えられましたが、お元気で矍鑠となさっています。対話は、自宅の居間で撮影された折口信夫のポートレートが映し出されたその前で行われました。吉増さん、「この折口さん、若々しいですが、おいくつの時?」と尋ねられます。折口は昭和28年の9月3日に67歳で亡くなりましたが、晩年の7年間を折口宅で同居された岡野先生、「この写真は若い、明るい感じですね。たぶん63歳ころでしょう」とのお答え。そうか、いまの僕と同じ歳なんだな、といささか感慨が湧きました、若づくりの当方としましても(笑)。

 吉増さんにも『生涯は夢の中径(なかみち)・折口信夫の歩行』という著作があります。〈声〉の問題、いや吉増さん流には〈聲〉でしょう、それにはずっと強い関心をお持ちで、この頃はエッセイ原稿も「書く」のではなく、音声で録音する、いわゆる「声書き」の手法を採用されている吉増さん、折口の晩年は、原稿の半分以上を口述筆記で作ったわけですが、その筆記役を担当された岡野先生には、たくさんうかがいたいことがあるのでしょう。興味深いエピソードが次々に語られました。今回の対話は、或るメディアで活字化されることになりそうですから、それをおおいに期待しましょう。

 岡野先生が披露されたお話しのなかで、きっと聴衆の皆さんにも強い印象を残したと思われるのは、太宰治が、玉川上水に飛び込んで情死をした際のエピソードですね。写真の折口が手に持っているのは、折口家の玄関?に飾られた河童の木像だそうですが、それは男女の二体があって、この女の河童、メガッパの話です。昭和23年の6月に太宰が愛人と梅雨の雨で増水した玉川上水に飛び込んだのですが、遺体が見つかったのは6日後でした。折口の弟子のひとりが太宰と親しく、毎日捜索の手伝いに行ったそうですが、その帰りに折口宅に来ては、「また今日も見つかりません」と報告があったよし。折口は、特に『津軽』などの太宰の作品が好きで、作家本人との面識はなかったものの、ずいぶん心配をしていたようです。その時、メガッパの表情がなんとも不気味だった、こんなエピソードです。

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 おふたりのトークの後は、会場からいくつか質問などもあって、2時間のイベント、盛り上がりました。さても岡野先生のお話のなかで、僕が興味を惹かれたのは、先生のご実家である三重県の山のなかの古い由緒を持つ神社のことです。お父さまが30何代めかの神主さんだったとか。あとから先生に直接うかがうと、当時は三重県一志郡八幡村、現在は津市に編入されたそうですが、川上山若宮八幡神社、とのこと。祭神は仁徳天皇だ、というのがスゴイですね。場所の見当がだいたいついたので、「奈良の室生寺の近くになるのですか」とうかがうと、「うん、そうですね。あそこから東のほうですよ」とのこと。室生寺ならもう何度か訪ねたことがあります。近くに水神を祀る祠などもあって、あのあたりは山を流れる水量の豊かなトポスです。若宮八幡神社、ネット検索したところ、こんな画像も見つけました。確かに風格のある古社ですね。

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 トークイベントが終了後は、少し歩いて東急本店の近くまで。岡野先生と吉増さんを囲んでの懇親会でした。ちょうど慶應義塾大学出版会から岡野先生の編集で、『精選 折口信夫』全6巻が出るところなので、慶應出版会の皆さんもご一緒です。またこちらは来週あたりから書店に出るでしょうか、同じく慶應出版会から『折口信夫 秘恋の道』を刊行された持田叙子さんも岡野先生のお隣に座ります。賑やかなウチアゲでした。

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ここでお知らせです。吉増さんの新著である『火ノ刺繍』(響文社)と、『舞踏言語』(論創社)の二冊を、「図書新聞」の9月8日号(ちょうど先週の号でした)で、詩人で美術評論家、多摩美の学長でもある建畠晢さん、それからモーリス・ブランショが専門の東大の先生です、郷原佳以さんとご一緒に、僕も参加して行った書評討議が掲載されています。吉増さんがおおいに喜んでくださったので、まあ成功(笑)でしょう。どうぞご覧くださいな。

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 もうひとつ、関連したお知らせがあります。『舞踏言語』刊行を記念してのイベントが、シアターχを舞台に三日間連続で行われます。そのチラシを以下に。

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 ご覧いただいたように、今月26日(水)は舞踏家の笠井叡さんを、27日(木)は舞踏家の中嶋夏さんを、28日(金)は奥さまでヴォイスパフォーマーのマリリアさんをそれぞれゲストに迎えての舞台イベントです。初日の26日には、僕も鼎談ゲストとして、吉増さんと笠井さんとのお話しに参加します。松濤の展覧会が24日にクローズしたと思ったら、さっそくこちらのイベント。吉増さん、大忙しです。僕も引き離されないように、吉増さんの後姿を追っかけます(笑)。折々、このブログで紹介しましょう、ご期待あれ。

 お別れの引用句、折口信夫に捧げた吉増さんの詩篇としましょう。

「折口さん、−−。
 貴方の古里、木津を訪ねると、ここも少し(心なしかたむいて)潮の匂いがしていました。
 僕も歌を歌えるようになるのだろうか。なるのではないだろうか。」

                       (吉増 剛造  「生涯は夢の中径――折口信夫に」)
 

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