林浩平の《饒舌三昧》

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zoom RSS シアターχでは吉増剛造さん『舞踏言語』刊行記念イベント、笠井叡さんや中嶋夏さんゲストでした

<<   作成日時 : 2018/10/02 23:22   >>

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箸おいて 居眠る癖や 秋の風       (内田 百閨j

 久しぶりに百關謳カの句を紹介します。昼食を済ませたあと、どこやら睡魔に誘われるままこっくりこっくり、という情景ですね。確かに、ひんやりとした微風が渡る秋の午後の気分でしょう。昼ご飯ということでは、晩酌のお酒をおいしく呑むために、昼はかけ蕎麦くらいがいい、とは先生のエッセイで繰り返されます。

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 このブログでもPRをしました、吉増剛造さんの著作『舞踏言語』の刊行に合わせてのステージイベントが、両国のシアターχ(カイ)で9月26〜28日の三日間にわたって開かれました。初日は舞踏家の笠井叡さん、二日目は同じく舞踏家の中嶋夏さん、三日目は吉増さんの奥様でヴォイスパフォーマーのマリリアさんがゲスト。とりわけ初日と二日目は満員御礼札止めの大盛況でした。このイベントをお手伝いしたものとしては、嬉しくありがたいことです。概要を報告いたします。

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 毎回、開演の前から舞台の上手(かみて)の端に吉増さんが座ります。前には詩句を彫り込んだ銅板が広げられて、脇には例のピンチハンガーが吊るされています。そして静かにパフォーマンスを。アイヌの木製の道具であるイクパスゥイを頭のうえに載せたり、或る回ではピンチハンガーを持って、前かがみの姿勢のままでゆっくりと舞台を歩きだしたり。吉増さん、これはもう舞踏を始めていますね。そして開演時刻、吉増さんが前口上を述べられて、ゲストの舞台です。

 初日は、ちょうど50年前、1968年の夏に、客席には三島由紀夫も瀧口修造もいた!!厚生年金小ホールで催されたデビュー公演『稚児之草子』を吉増さんもご覧になった、という笠井叡さんのソロダンスです。吉増さんの長編詩「熱風、a thousand steps」を笠井さん自身が朗読した音声が流れて、笠井さん、踊ります。後半から背景のスクリーンには、これも笠井さんが撮られたという空などの動画が映写されました。こんな感じです。

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 これは、体内でヴォルテージの高まったエネルギーが噴出されたような、凄みのある舞台でしたね。笠井さん、熱演のあまり脛をすりむいて血がにじむのですが、そんなことにはお構いなく展開されます。後半にはかぶさった音楽に混じって、ドンドンと床を叩く音が響きます。これは、上手にすわったままの吉増さんが、手にしたハンマーで打楽器奏者となってのサウンド。笠井さんの朗読する吉増さんの言葉に響き合います。まったくのコラボレーションでした。(ちなみに初日の舞台映像は、この企画の仕掛人で『舞踏言語』を編集した志賀信夫さん撮影のものです。)

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笠井さんの大熱演の終了後は、舞台に椅子が三つ並べられました。ステージの大きな感銘の余韻のなかで、笠井さんに吉増さん、それに僕が加わってのトークタイムが続きます。吉増さん、詩集『熱風』のなかから、一般的には代表作である「絵馬」ではなく表題作を笠井さんが選ばれたことに驚かれていますね。「いま舞台の端に座って拝見していて、ちょっと経験したことのない情動を感じていました。」なるほど、それほどのインパクトを吉増さんが受けとめられましたか。

 三人でのトークは、「声とカラダ」は同根のものと捉えて、『カラダという書物』などその著作でも独自の身体哲学を展開される笠井さん、それに「聲」という表記にこだわって、詩の声の問題をずっと引き受けてこられた吉増さん(一昨年の展覧会タイトルは「声ノマ」でしたし、松濤でのタイトルは「涯テノ詩聲」でした)、おふたりの問題意識が重なる「声」をめぐって、なかなか充実したものになったでしょう。と、ここは自画自賛しておきます(笑)。またこの座談は、「図書新聞」紙上に追って掲載してもらえることとなりました。おたのしみに。

さてここまで綴ってきたところで、志賀さんより、当日の舞台写真を担当された写真家の小野塚誠さん撮影の画像を送っていただきました。いや、さすがに素晴らしい。どれにも©M.ONOZUKAが入っています。ご覧ください。

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 そして翌27日、この日のゲストは女性舞踏家の中嶋夏さんです。吉増さんは、1972年に「人形劇精霊(しょうりょう)棚」のために詩篇「恋の山」を書き下ろし、ジャズの翠川敬基さんらの演奏をバックに朗読、そこでの舞踏を振り付けたのが夏さんでした。夏さん、この日の舞台では、霧笛舎のダンサーたちを率いて、「瓦礫と包帯」と名付けた舞踏作品を踊りました。天上から降ってくる、やわらかな灰と、腕に巻いた包帯、この物質的イメージがよく生きた作でした。

 トークには、慶應アートセンターの土方巽アーカイブの森下隆さんが加わって、夏さんが師事した土方や大野一雄さんの思い出が語られます。このときの画像も、小野塚さんが撮影されたのを拝借します。

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 いよいよ28日の最終回。この日は故大野一雄さんを主役にして、大野さんにはとても大切にしてもらったというマリリアさんが熱唱します。背景には、映像担当の鈴木余位さんのモンタージュによる大野さん画像が投影されました。 

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 続いての画像ですが、歌うマリリアさんの三枚は、写真家の池上直哉さんが撮ったもの。ですから、©IKEGAMIですね。これまた、見事なものですよ。

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最終回のトークゲストは、以前には思潮社の「現代詩手帖」の編集長を務めた樋口良澄さん(僕も詩の世界への執筆デビューは樋口さんにお世話になりました)。「詩手帖」誌上では何度も舞踏を特集に採りあげ、とりわけ大野一雄さんとは密接なつながりをお持ちでした。現に『舞踏言語』に収められた大野さん関連の座談会のうち、大野さんご本人を交えたものは二本、大野さん亡きあと、息子さんの慶人さんと吉増さんの座談一本に、樋口さんは司会役で登場しています。

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                          (撮影:池上直哉)

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うえの画像、大野さんがお隣の吉増さんに手を挙げながらお話ししていますが、これは僕がコーディネートしてNHKのテレビ番組「吉増剛造 芸術家との対話」で行った対談の際のもの。1995年でしたから、大野さん当時は89歳でしたね。

 この最終日、スペシャルゲストがお見えでした。大野一雄さんの息子で舞踏家の慶人(よしと)さんです。ただ慶人さん、ご病気をされてお体の自由がききません。ステージの階段を上がることもままならないよし、それでもせっかくですから、というので、持参されたお人形(「大野一雄人形」だそうです、ファンのかたが造ってくれたとか)をとりだして、エルビス・プレスリーの歌うバラードに合わせての、「手の舞踏」でした。これは、この三日間の『舞踏言語』のイベントを締めくくるのにふさわしいものです。池上直哉さんの二枚の画像をまずどうぞ。

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 フィナーレには、マリリアさん、樋口さんの他に、27日のゲストの中嶋夏さんも加わって、賑やかなエンディングでした。ここは僕が撮影したものですが、会場の盛り上がりを想像ください。

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 と、ここまで来て、お別れです、というところで、ちょうどもうひとりの写真家の高島史於さんが撮影画像を送ってきてくださいました。おお、これも素敵です。©TAKASHIMAということで、以下をご覧ください。

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 お別れの引用句、吉増さんの詩篇「恋の山」から、としましょう。ただし、名フレーズとして名高いくだりは、先日もこのブログで引きましたので、違うパートを。

「天は羽撃き
 海嘯、沿岸にうねり輝き
 美しい
 処女(おとめ)は
 壮大に
 腿をはり
 古代歌謡をうたう
 その
 ひじょうな低音は宇宙の形に似て軽やかに木をとびこえるのだ」

                             (吉増 剛造     「恋の山」)

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