林浩平の《饒舌三昧》

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zoom RSS DIC川村記念美術館では詩人・平出隆氏による「言語と美術」展OP、見所一杯です!

<<   作成日時 : 2018/10/13 01:29   >>

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 目にて書く 大いなる文字 秋の空     (高濱 虚子)

 抜けるように青く広がった秋空を詠んだ虚子の句です。雲ひとつない秋空に、幻の文字を書いてみよう、というわけです。しかし今年は気候不順、こんな秋空にはまだお目にかかれません。

 佐倉にあるDIC川村記念美術館、このところユニークな企画展にトライしておおいに怪気炎を上げていますね(笑)、去年は美術史家の林道郎さんのセレクトによる収蔵作展を行ないましたが、今年の秋は、「言語と美術−−平出隆と美術家たち」という企画を実現させました。10月5日には内覧会が開かれ、招待をいただいたのでありがたく参加しました。

 しかし、当日は先日の大型台風の影響も絡んで、首都圏は交通網のトラブル続きです。京成線に乗ろうとJR日暮里駅の乗り換え口に行くと、「停電のため運休、運転再開の見通しつきません」の看板が。どうやら大風による塩害が原因だったようですが、こりゃダメだなと判断して、JR成田線を使うことにします。山手線を秋葉原まで、総武線に乗り換えて、それから成田行きの快速に、と思っていたら、これがまた遅延中。JR佐倉駅に到着したのは、美術館の送迎バスが到着する12時30分寸前でした。僕はダッシュでバス乗り場に駆けつけますが、幸いにバスが遅れて(あるいは遅らせたか)、JRで到着したかなり大勢のひとたちも全員がセーフでした。やれやれ、です。

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 当日は生憎の小雨模様のお天気でしたが、それでも川村を訪ねるときの恒例のランチタイム、デパ地下で買ったお弁当を白鳥池の脇の藤棚の下でいただきます。この日は、「なだ万」の牛肉香味焼弁当です(笑)。それから内覧会の会場に向かいます。

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 今回は、タイトル「言語と美術――平出隆と美術家たち」とあるように、詩人で現代美術にも強い関心を持ってきた平出隆さんのプロデュースによる企画展です。「言語」と「美術」が鋭く交差するところに生まれる「対話」の多様な形態に注目しての企画であると謳われます。開会式では、その平出さんがご挨拶、企画の狙いなどについてスピーチがありました。来賓席には、会場構成を手掛けた建築家の青木淳さんや、出展作家である加納光於さん、やはり出展作家で詩人で、平出さんの奥様でもある河野道代さんが座っていますが、交通網の乱れでまだ到着していない来賓も何名かいるようです。開会式の後は、さあ内覧会です。例によって、館から取材用の腕章を拝借、デジカメ取材をいたしました。

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 内覧会、最初に案内されたのは、一階フロアの特設会場Xです。ここは「モーリス・ブランショと3人の美術家・終わりなき対話」と題されていて、フランスの思想家・作家のブランショと深い縁を持つ3人の日本の現代美術家にスポットが当てられます。故若林奮さん、故中西夏之さん、そして加納光於さん、です。1978年の「現代詩手帖」誌の臨時増刊号でブランショ特集号が出た際に、3人はカットや作品を寄せているのですね。そうか、この特集号を編集した、当時の「詩手帖」編集長だった山本光久さんとさっきバスでバッタリ会って、この日は帰り道もご一緒したのですが、山本さんは、ブランショの弟子筋?の思想家ロジェ・ラポルトの専門家でもあって、このあたりは詳しいのです。特集号でこの3人を引きこんだのはお手柄でした(笑)。

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 フロアには中西さんの「緑と白」を主題とする「絵画場」シリーズの作や、若林さんの「境川の氾濫」などが展示されます。(©中西夏之、©若林奮、©加納光於、です。)加納さんは作品をブランショに贈ったことがあるよし、別室にはブランショからのお礼の手紙も展示されていますが、ご本人にうかがうと、「フランス文学の清水徹さんが仲介してくださったのですよ」とのことでした。清水さんといえば、ビュトールやデュラスの翻訳が名高いですが、ブランショの『マラルメ論』(筑摩叢書)に収められた重要論文「書物の不在」は清水さんの訳です。これは僕なども拳拳服膺しました。現在では、郷原佳以さんの新訳も出ていますね。

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 さて本会場である二階に戻りましょう。平出さんのコンセプトだという「空中の本」、フロアには透明なアクリルケースが吊るされて?いて、そこに手紙や書物が展示されています。この会場構成を建築家の青木淳さんが手掛けたそうです。

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 おや、そうやって空中に浮かんだ本のなかに、平出さんの詩集『家の緑閃光』がありました。(©平出隆)これは装丁家の菊地信義さんの手による、ふっくらと柔らかくふくらんだ表紙の感触が心地よい、佳い詩集です。そうそう、作中にも出てきますが、エリック・ロメール監督の映画『緑の光線』との照応があるのですね、六本木のシネ・ヴィヴァンで見たあの映画のことも思い出します。

 さても二階フロア全体は迷路のように、いくつものブースに分けられていますが、各ブースの壁面ごとに作家の名前があって、それぞれの作品に接することができます。まずは、ここ川村がいくつも所蔵するジョセフ・コーネルやら、そして瀧口修造のコーナーです。瀧口さんはお馴染みのデカルコマニーのほか、リバティ・パスポートなどでした。(©瀧口修造)

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続いては、河原温さん、岡崎和郎さんです。町田にお住まいの岡崎さん、本来なら出展作家として開会式で来賓の席に座る予定だったのが、交通マヒで、到着が遅れて、姿をお見せになったのは、レストランでレセプションの始まった3時すぎてでしたね。展示されたのは河原さんのデイト・ペインティングや、岡崎さんの「補遺」を主題としたオブジェです。(著作権の許認可のことがあって、河原温さんの生前にはお目にかかれないままだった僕は、作品掲載の許可を頂いていないので、河原作品の画像はここに載せられません。まあでも皆さんご存知ですよね(笑)、デイト・ペインティング。)そうそう、平出さんはすでに何本かの河原温論を書いて、評論集『遊歩のグラフィスム』のなかに読むことが出来ます。僕は岡崎和郎論をMA2ギャラリーの展示会のパンフレットに執筆したことがありますよ。(©岡崎和郎)

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次が写真家の奈良原一高さんの名前のあるコーナーですが、ここはとりわけ興味深かったです。デュシャンのあの「大ガラス」のオリジナルをフィラデルフィア美術館で奈良原一高氏が撮った画像それ自体も実に佳いのですが(ちゃんと破損箇所が写っています)、なんでもそこに平出さんが書き下ろしで詩を添えるこころみを行なっているよし、です。(こちらも奈良原さんとまだお会いする機会のないままですので、残念ながら個別の作品画像なし、です。)

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 それから2003年に亡くなった若林奮さんに関しては特別にワンフロアが充てられていますが、河野道代さんと若林さんとの共同制作もあります。そういえば河野さんとお目にかかるのは、まだ若林さんもお元気だったころに銀座の画廊であったそのコラボ作品の展示にうかがった時以来でした。と、ご挨拶。お馴染みの「振動尺」や「DAISY」も展示されています。犬クン作品も発見(笑)。

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 平出さんご自身の書物なども展示されていますが、おお懐かしいなあ、稲川方人さんらとの詩の同人誌「書紀」や「書紀=紀」、それに建畠晢さんもメンバーだった同人誌「stylus」が出ていました。(あれ?会場には建畠さんの姿、それに世田谷美術館館長の酒井忠康さんの姿も見えませんね。金曜の午後、所用もおありでしょう。)

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 加納光於さん、そして瀧口修造研究家の岩崎美弥子さんがおられたので、「記念スナップ、撮りましょう」です(笑)。

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 この内覧会、招待いただいたひとは、リストバンドを腕に巻くわけです。はい、それも記念撮影しておきました(笑)。

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 しかし、この展覧会、とても一度では十分に鑑賞できません。今度はお天気のよい日を見つけて、もう一度来なくては、です。「言語と美術」、あるいは「詩と美術」、きわめて密接に結びついたジャンルですよ。

 お別れの引用句、平出さんの詩行としましょう。

「ヴェランダに日曝しの、擦り傷がちの両脚で挟めるく
 らいの、たつたひとつところ黒鍵を狂わされていたあの
 安っぽい玩具のピアノこそ、ありうべかりし最高に美し
 い散文を叩き出すのに。」

                    (平出 隆  「追悼のピアノ」 詩集『家の緑閃光』より)

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