ワタリウムでは「クマグスの森」展+吉増剛造gozoCine上映会

 霜の墓 抱き起こされしとき見たり    (石田 波郷)  波郷は結核患者でしたから、いわゆる療養句というのが非常に多いわけです。江東区北砂町の家の二階からは近所の寺の墓地が見えたといいます。よってそんな作者の境遇を知っていれば、この句は寝たきりの波郷が家人に抱き起こされたとき、窓の向こうに霜が下りて真っ白になった墓石の群を見…
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高見順賞に稲川方人さん+新担当講座「文芸理論」「テキスト構造論」「文芸創作理論」

 四囲(しい)の音 聴き澄ますとき 冬深く  (加藤 楸邨)  真冬の凛と凍てついた大気のなかでは、周りの物音もどこかピュアに響いてくるようです。これは恐らく深夜でしょう。街の音にふと耳を澄ましてみると、冬が深く進んでいるのを実感した、という句境ですね。楸邨という俳人、かの有名な「寒雷やびりりびりりと真夜(まよ)の玻璃(はり)…
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今年百歳の映画監督オリヴェイラの「夜顔」、堪能しました+ツェランの姉的存在の詩人のこと

 ゆふやみの わきくる羽子(はね)を つきつづけ   (久保田 万太郎) 「羽子」は羽子板の羽のこと。新年の季語にあたります。羽子板遊びに夢中になり、遊び続けるうちにあたりは夕闇に包まれてくる、という情景を詠んだのでしょう。さて問題は、羽子板をついているのは誰なのか、です。老体の万太郎ではありえません。では近所の子供たちか。い…
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正月に聖徳太子ゆかりの古寺を訪ねます+サッカー初蹴り紅白戦に臨みました

 人の手に はや古(ふ)りそめぬ 初暦    (正岡 子規)  古来よりお正月気分というのは独特なもの。なにもかもがそっくり新しく再生した感じの昂揚感があって、「おめでたい」となるわけでしょう。カレンダーも新しくなりました。しかし、年が明けて数日が過ぎるうちに、新年のカレンダーも見慣れたものとなり、「めでたさ」もどこへやら、ま…
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永井荷風『断腸亭日乗』ばりに歳末饒舌日誌を綴ります。

 言葉なく 手帖なでをり 年の暮れ     (江渡 華子)  以前にも一句ご紹介した江渡華子さんの歳末句です。江渡さん、1984年生れといいますから、まだ23歳。今年の春に出した初めての句集『光陰』にはとてもイマドキの若い女性とは思えないくらいの深い叡知を感じさせる言葉が選ばれていて、思わずドキッとさせられます。歳末の一日、今…
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葉山館の「プライマリー・フィールド」展+原美術館ではピピロッティ・リスト「からから」展

 水洟(みずばな)や 仏具をみがく たなごころ   (室生 犀星) 「水洟」という季語を用いた句では、犀星の友人だった芥川龍之介に「水洟や鼻の先だけ暮れ残る」があって、こちらはかなり人口に膾炙しているでしょう。いっぽうの犀星の句、ちょっと芥川を意識しましたかな。しかし句境はだいぶ違います。正月を迎えるので仏壇も煤払いをしなくて…
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露口啓二写真作品「ミズノチズ」の札幌の映像+新宿エプサイトでの安楽寺えみ写真展

 木の葉髪(このはがみ) 文芸永く 欺(あざむ)きぬ   (中村 草田男)  俳句では嘱目の景物を巧みに詠みとったものばかりが秀句ではありません。いわばひとつの箴言として、自己言及的に俳句や文学というものの本質を射抜いた寸言ふう作品にも名高い名句があります。この句は、石田波郷の「霜柱俳句は切字響きけり」とともに、そのタイプの双…
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ダニ・カラヴァンによるベンヤミン追悼オブジェ+ジョセフ・ナジと『オルレアンのうわさ』

 貧乏な 儒者とひ来(きた)る 冬至哉     (与謝 蕪村)  冬至到来も近くて、日脚がうんと短くなりました。冬至を詠んだ句でもっともユニークなのはこの蕪村の詠作でしょう。蕪村は京の町屋に住みました。底冷えのする京の冬の夜、流行らない私塾を開いて「論語」を教える友人が蕪村宅に遊びに来た、というのでしょう。手あぶり火鉢を抱えな…
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若林奮「DAISY」展を観ました+平出隆『遊歩のグラフィスム』の思考

 狂院の 冬の青藪 日は正午    (中村 草田男)  冬の真昼に、草田男は精神病院の脇を通り過ぎたのでしょう。その庭には藪がちらりと見え、その青さが眼に焼きつきます。物皆枯れる真冬に、狂院の青々とした藪の茂み。その青さのなかに、草田男の鋭敏な感受性は、どこか狂気につながるものを見たのかもしれません。つい先日、草田男の三女である弓…
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多田道太郎氏を悼む+ピナ・バウシュ来春の公演予定

 三階に 独り寝に行く 寒さかな    (夏目 漱石)  師走に入って、夜は寒さが募るように感じられます。そこでこの句です。なかなか「小説的な」一句ではないでしょうか。しかし、独り寝のふとんが敷かれているのはどんな家なのかによって世界はまるで変わります。早稲田の漱石山房が三階立てだったということはないですから、これ、どこかの下…
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わが吉増剛造論『裸形の言ノ葉』、誕生です+森鴎外『寒山拾得』の不思議

 冬木照り 野の寂寥(せきりょう)のあつまりぬ   (加藤 楸邨)  暦は師走となったので冬らしさを実感させる句を引きました。冬枯れの野原にはまばらに何本かの裸木が立っています。その木に冬の午後の鈍い光が射して、それを眺めていた俳人のこころにふと寂寥感が兆した、という句境でしょう。楸邨という俳人は、例の「人間探求派」のひとりで…
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ジャ・ジャンクー監督のドキュメンタリー『東』を観ました+ロジェ・ラポルトの新著『探求』

 秋の航 一大紺 円盤の中   (中村 草田男)  俳人・草田男のこと、或る展示企画に関わることとなって、しばらく勉強しなくてはなりません。もうすぐ師走も近く、昨今の季節感では初冬ですが、暦ではまだ秋なので草田男の秋の代表句を引きました。この句、一読、難解な印象を与えますが、実際は嘱目の風景を明快に詠んだもの。秋晴れの一日、俳…
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「現代詩花椿賞」パーティーの夕べ+サッカーJリーグ観戦記

 雲幾重(いくえ) 風樹(ふうじゅ)幾群(いくむれ) 秋ふかむ   (石田 波郷)  急に寒波が到来で、「秋ふかむ」というよりは「冬きたる」という感じの今日でしたが、暦は十一月後半、ということで、波郷のこの名句を紹介しましょう。モダンな抒情性を17文字に盛り込むことにたけた波郷ですが、時には大胆不敵な措辞を用いるのを憚りません…
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シュルツの短編「肉桂色の店」は現代詩です+わが吉増剛造論、誕生近し、です。

 千人の 天文学者 つどふ秋      (松本 邦吉)  現代詩人の松本邦吉さんは、長谷川櫂門下の俳人でもある、という話は以前にもしました。この句は松本さん自選の句のひとつ。一読、澄み渡った秋の夜空に満天の星が煌煌と輝く情景が浮かびます。いかめしい髯をたくわえた老天文学者らが千人、手に手に天体望遠鏡を携えて夜空を仰いでいる図などを…
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京都まで「狩野永徳展」鑑賞弾丸ツアー+秋の山科古寺巡礼

 さじでたべる子 箸でたべる子 きりぎりす   (荻原 井泉水)  近代の自由律俳句の牽引者だった井泉水(せいせんすい)の句です。主宰する俳誌「層雲」からは山頭火や尾崎放哉などのスターが誕生します。近年の草稿の発見によって、放哉の句稿にはずいぶんとこの師匠の手が入っていたことが明らかになりました。いや、井泉水さん、いいですよ、…
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久万美術館の吉増剛造Cine、衝撃でした+正岡子規と野球

 きりぎりす ながき白昼 啼(な)き翳る     (山口 誓子)  誓子さんこのブログには初登場のはず。「ホトトギス」の出身ですが、作風には現代俳句に一脈通じるところもあって、俳誌「天狼」を主宰します。この句の眼目は「啼き翳る」でしょう。「翳」ったのは秋の日射しであり、またきりぎりすの声でもある、というわけです。かえって作者の…
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装丁家・菊地信義、面目躍如の2詩集+久々にサッカー談義

 雁(かりがね)や けふはなやぎし蕎麦の紅     (石田 波郷)  格調高い波郷の句、蕎麦の花の可憐な紅色を詠んだもの。そして秋になるとこの国に渡ってくる雁のイメージを合わせることで秋冷の空気感を呼び込みます。技量抜群の波郷ならではの名句でしょう。「はなやぎし」が効いています。  「芸術の秋」には詩集にも力作がいくつか誕生…
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詩人北村太郎がモデルのねじめ正一新作小説+吉増剛造の朔太郎論『猫町映画館―下北沢』の構想

 だいぶ寒うなりましたと山鳩が啼(な)いている    (辻 征夫)  詩人の辻征夫さんの遺稿句集『貨物船句集』から。「貨物船」は辻さんの、ちょっとユニークな俳号でした。辻さんは、八木忠栄・井川博年・中上哲夫・谷川俊太郎・清水哲男といった詩人諸氏に作家の小沢信男、評論家の多田道太郎らが参加する句会の常連でした。亡くなった後に残さ…
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gozoCineの新作「鏡花フィルム」はまさにパンク!+ペドロ・コスタ監督in山形

 秋晴れて ものの煙の 空に入る     (正岡 子規)  子規の俳句には時々、えっ!と驚くほど新鮮な視覚で詠まれた叙景の句があります。これなどそうでしょう。何かを燃やす煙がうっすらとたなびき、秋の高い空に消えて行きます。子規はそれを根岸の六畳間の病床からじっと眺めていたのでしょう。  さて、先日再び訪ねた四国は愛媛県の…
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吉増さんご母堂悦さんの本『ふっさっ子剛造』誕生+建築のシュルレアリスト・キースラー

 川蟹の しろきむくろや 秋磧(あきがわら)   (芝 不器男)  これは四国は愛媛県の南予地方を流れる広見川の河原が舞台です。この川の流れる盆地の村・松丸に不器男は暮します。秋の一日、久しぶりに河原に下りてみました。蟹の亡骸はすっかり白くなって夏は遠ざかったことを実感させます。この白さ、河原を吹く秋風の冷たさも暗示するようです。…
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