林浩平の《饒舌三昧》

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zoom RSS シス書店ではN・リボー「マルドロールの歌」展+日仏では松本春崇「家縛りプロジェクト」シンポでした

<<   作成日時 : 2018/04/10 00:54   >>

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 濡れたまふ 弥勒も宇陀の 花じまひ       (飴山 實)

 奈良の室生寺を訪ねる際に乗ったバスの車窓から目の前に見えるのが、川に面した30ⅿの巨岩に彫られた摩崖の弥勒菩薩です。大野寺のこの摩崖仏、開眼供養には後鳥羽上皇も臨席したとか。春雨が桜を散らしてゆく風情を詠みました。句集『次の花』には、大和の古寺を巡った際の作が多く収められます。

 4月7日の土曜日は、都内各地で知友らの関わる色んな催しがたくさん行われました。まず恵比寿を訪ねます。久々のシス書店です。ユニークでチャーミングなドローイング&コラージュの展示でした。

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作者は、ナディーヌ・リボーNadine Ribaultという1964年生れのフランスの女性作家・詩人です。僕は知らなかったのですが、フランスではガリマール書店から作品集を出しているといいますから、高い評価があるのでしょう。文学が専門ですが、近年、自分でコラージュやドローイングを手がけだしたよし。シュルレアリスムの流れを汲む詩人たちはよく自分でもオブジェ制作に手を染めます。ブルトンしかり、また瀧口修造など典型です。

 今回は、ロートレアモンの『マルドロールの歌』を主題にした連作ドローイング作品展です。京都にも暮らしたことがあるという作家が、どうやら「3・11」の福島原発事故から触発されて、このテーマを選んだようですね。こんな感じです。

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 好きな画家や作家が、トワイヤン、マックス・エルンスト、レーモン・ルーセルというのですから、この作風は納得です。シュルレアリスムのスピリットをまっすぐに受け継いだ作家といえます。

コラージュ作品や、マッチ箱?を使った小さなオブジェも魅力的です。画廊主の佐々木聖さんから、「今日の17時から、リボーさん本人も見えてのオープニング・レセプションですから、いかがです?」とお誘いをいただきますが、この日はとにかく掛け持ちなのです。同じ恵比寿の日仏会館で15時からのシンポを聴講して、夜は俳優座でダンスを鑑賞、さらに浅草橋の画廊のオープニングにも顔を出す予定。リボーさんの展示をじっくり見てからシス書店は失礼しました。今月22日までやってます。

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 山手線をまたいで、日仏会館にやってきました。ここでは、現代美術家の松本春崇(はるたか)さんが続けている「家縛りプロジェクト」というアートパフォーマンス?をめぐるシンポジウムが開かれます。僕はサルトルが専門の仏文学者で詩人の澤田直さんから、パリ留学時代からの友人というので松本さんは紹介されていたのですが、「家を縛る」アート? え?なんだろう、クリストみたいに巨大建築物を包む、ならありだけど、縛るって?どういうものなのか、不案内のままでした。そのシンポジウムというのですから、これは参加しなくては。

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 司会の澤田直さんの隣に松本春崇さんが並びます。パネラーには、慶應義塾の哲学が専門の山内志朗さん、美術ジャーナリストの村田真さん、日仏会館スタッフのレミ・スコシマロさん。(山形の出羽三山に近いところで育ったという山内さん、ライプニッツやグノーシス派が専門とのことですが、修験道も研究されています。近著である『湯殿山の哲学』をちょうど先日に読んだところでした。)

 会場では松本さんがこれまで縛ってきた家の記録写真がたくさん載った立派な冊子が配られました。また舞台スクリーンに、そうした画像や、実際に恵比寿はご近所にあるアートショップのNADiffの建物を縛った際の記録動画が上映されます。

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 山内さんが用意されたレジュメには、この家縛りアートの要点を的確に分析されてのキーワードが並びます。そのなかの「インヴォルブメント・アート」、つまりアクティブ・オーディアンスの参加による巻き込み型イベントである、というのがわかりやすいですね。まず松本さんが縛るための縄をなうというところからスタートするそうですが、実際に「縛り」を始めてみると、その家のひとや、ご近所のひとも参加してみんなで力を合わせて、となるそうです。ですから、ひととひとを「結ぶ」というので、「家結び」アートとも言い換えられるかな、ということですが、しかし松本さんとしては、挑発的な「縛る」にこだわりたいとか(笑)。

 会場には、実際に自宅を縛ってもらったというかたも何人もお見えでしたが、ビックリしたのは、僕がロックバンドで一緒にやっているギタリストで、仏文学者のコマバの先生である星埜守之さんも、2005年に国立のお宅を縛ってもらった経験があったよし。バンドを組む前なので、その話は初めて知ってビックリでした(笑)。「縛られる」ことで一種の結界が出来て、日常の空間が異化されるというのはよくわかります。また家族を問い直す?試みでもあるのでしょう。単純に、ふだんは交際のなかったお隣さんとも付き合いが生まれたりとか。なるほどねえ、これはなかなか興味深いコンセプチュアル・アートですよ。

 さてシンポジウムの終了後は会館の上階のスペースで、実際に「縛り」アート作品が展示?されたところに移動をして打ち上げでした。思いがけず、知友の皆さんとも大勢お目にかかりましたが、松本さんを囲んで、詩人で現代アートに関心を持つ田野倉康一さんも一緒に、僕も記念撮影、でした(笑)。

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 お別れの引用句、『マルドロールの歌』から、としましょう。邦訳はいくつもありますが、現代思潮社版の栗田勇訳から。この本は、結婚した際に家内が所持していたので、我が家の書架に並びました。

「ぼくはぼくに似た魂を探していた。だがしかし、見出すことができなかった。ぼくは地上の隅々までも探しまわった。ぼくの不撓不屈も無駄だった。それでも、ぼくは一人ぼっちではいられない。」

                      (ロートレアモン 『マルドロールの歌』 「第二の歌」・栗田勇訳)



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