林浩平の《饒舌三昧》

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zoom RSS 十田撓子さん『銘度利加』のH氏賞授賞式でした+吉増剛造さんと堀江敏幸さん、新刊記念トーク

<<   作成日時 : 2018/06/02 01:22   >>

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 水さつと 抜手ついつい つーいつい      (芥川 龍之介)

 芥川の句には奇想句も多いのですが、これには「倣惟然坊」という詞書があります。江戸の俳人で芭蕉の弟子でもあった広瀬惟然に倣う、というわけです。惟然には、擬声語など口語を使った作が多くて、有名なのは「水鳥やむかふの岸へつういつうい」です。まさにこれを本句?としましたね。夏の隅田川をクロールで泳ぐひとを詠んだのでしょう。

 さて、5月27日(日)でした。飯田橋にあるホテル・メトロポリタンエドモンドにて、日本現代詩人会の主催する「日本の詩祭2018」が開かれて、先日決まった今年度のH氏賞と、現代詩人賞の授賞式が行われました。このブログではすでに何度もお知らせしていますが、僕が出版をお手伝いして解説も書きました、友人の十田撓子(とだ・とうこ)さんの詩集『銘度利加(めとりか)』が、晴れてH氏賞、詩壇の芥川賞と言われますね、それを受賞したので、お祝いに参上しました。

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 選考経過報告の後は、会長の新藤涼子さんによるH氏賞の贈呈です。いやあ、本当に「おめでとう」でした。その後には、受賞詩集と詩人についてのスピーチですが、これは僕が担当しました。十田さんと最初に知り合ったのが、美術家の片岡雪子さんの紹介で、2014年の3月、それ以来、詩集の刊行にいたるまでのことなどをお話しました。

 触れておきたかったのは、十田さんと僕とともに愛読するフランスの詩人のフィリップ・ジャコテのことでした。「死者たちへの哀悼」を主調低音として持つといわれるジャコテ同様に、『銘度利加』にも、詩人の身近な死者たちへの「喪の作業」としてのエクリチュール、という性格が強く出ていると思います。そして、十田さんご本人の受賞の言葉、さらに受賞詩集のなかから、詩篇「殯(もがり)」を朗読しました。

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 H氏賞の次には、現代詩人賞の授賞式です。清水茂さんの詩集『一面の静寂』が受賞しました。清水さんは1932年生れですから、今年は86歳、早稲田でフランス文学を教えられました。フランスの詩人のイブ・ボヌフォアの親しい友人でもあって、ボヌフォアの翻訳も多数あります。僕が一度お目にかかったのは、もう10年ほど前でしたか、美術史家の林道郎さんらとやっていた瀧口修造研究会で、誰でしたっけ、画家のヴォルスについての発表を行った回に、谷とも子さんの紹介でお見えくださったのでした。朗読なさったのは、そのボヌフォアへの追悼詩でした。

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さてこの日の会場には、十田さんの詩を愛読する詩人の皆さんもお見えでした。去年の中原中也賞詩人である野崎有以(あい)さんは、会場で配布された冊子「現代詩2018」に、『銘度利加』の評を綴ってくれています、「青い詩集」というタイトルで。なかなか良い文章ですよ。それから、朝吹亮二さんもお見えでした。「好きな詩集ですよ」とのこと、ありがたいです。十田さんと一緒に記念撮影の4Sでした。

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 さて、日が移って、31日(木)の夜でした。銀座に出来たGINZA SIXというオシャレなビルの6階フロアには、蔦屋書店が入っています。その一画で、『火ノ刺繍』を刊行されたばかりの吉増剛造さんと、エッセイ集『曇天記』(都市出版)と『坂を見あげて』(中央公論新社)の二冊をだされたばかりの堀江敏幸さんとの公開対話があったので、行ってきました。聴衆、わあたくさん集まっていますね、40人近くいたでしょうか。

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 面白いのは、『火ノ刺繍』が、2008年から2017年までの10年間の文章と対話を集めて編集されているわけですが、堀江さんの『曇天記』も雑誌「東京人」に、2008年から2017年まで連載された文章をまとめたものですので、ちょうどこの10年間、が共通するのです。偶然とはいえ、刊行のタイミングがドンピシャでした(笑)。対話は、この27日(ちょうどH氏賞授賞式の日、でした)の毎日新聞の書評コーナーに、堀江さんが執筆した『火ノ刺繍」の評が5枚ぶんの長さにわたって掲載されたところだったため、そのコピーが会場に配られて、それを起点にスタートでした。

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 吉増さんは、堀江さんの三島賞受賞のエッセイ集『おぱらばん』の新潮文庫版の解説を書いてられますが、エッセイ「おぱらばん」は印象的な卓球のシーンで終ります。そのピンポンでの球の打ち合いのように、いわば呼吸のあったおふたりのトークでしたね(笑)。司会を担当したのは、『火ノ刺繍』の編集実務を担った吉原洋一さんですが、この分厚い一冊には、その吉原さん撮影の、2011年2月から2012年2月までの、毎月22日の吉増さんを撮ったポルトレが収められています。この肖像写真がとてもいいのです。

 では、二冊の本(はい、会場で購入しました(笑))に堀江さんがサインをくださったその画像と、吉原洋一さんの名ショットを御覧ください。

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 お別れの引用句です。最初に返って、十田さんの詩篇から、としましょう。

「ゆめうつつに、磔にされた鳥を見た
 夜嵐の過ぎた薄明に菩提樹がうなだれて
 樹上に引っかかった濡れ羽の
 それは、ただ黒い塊となって事切れていた
 あなたはどこにいるのだろう」

                     (十田 撓子  「殯」    詩集『銘度利加』より)

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