林浩平の《饒舌三昧》

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zoom RSS 松濤美術館では「涯テノ詩聲 詩人 吉増剛造」展がはじまりました。内覧会に出席です。

<<   作成日時 : 2018/08/12 15:50   >>

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  真白なる 猫によぎられ 大旱(おほひでり)     (加藤 楸邨)

 炎天のもとを歩いていると、白猫がトットコ道をよぎっていった、という情景です。真っ白なネコ君、どうやらこの強い陽射しもこの暑さも気にならないみたい。白日のもとの白いネコ、というのが、強烈なイメージ。愛猫家の楸邨先生、ネコを詠んだ句が多いです。

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 チラシをご覧ください。「涯テノ詩聲(ウタゴエ) 詩人 吉増剛造」展、足利市美、那覇の沖縄県立博物館・美術館と巡って、最後はここ渋谷区立松濤美術館での開催です。僕は、足利も那覇も、オープニングに参加して、このブログでレポートしてきました。今回も出席せねば。内覧会、10日金曜の午後3時からです。台風13号が通り過ぎた後で、また猛暑が舞い戻った渋谷の街を訪ねました。正面入り口の脇には大きな展覧会看板が出ています。

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 一緒に訪ねたのは、詩人の野崎有以(あい)さんとです。前々回の中原中也賞受賞詩人の有以さん、目下「絶好調」というので、博士論文の執筆に精を出しながら、詩もどしどし書いていますね。「現代詩手帖」では今月号から連載が始まっています。看板の前でポーズ。

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 同じ場所で、僕も撮ってもらいましょう。午後の陽射し対策であるとともに、先日顔面にちょっとケガをしたので、このところ外出の際にはサングラス着用です。

 さあ、まず地下二階フロアへ。開会式会場、おずおず足を踏み入れると、おや、あまり見知ったお顔がありませんね。あれれ、でしたが、だんだん吉増さんの周囲でいつもお会いする皆さんが入ってきました。開会式です。西岡館長のご挨拶などがあって、そうか、初めに目に入ったひとたちは渋谷区議の皆さんでしたか。10名ほど参加しています。(世田谷文学館や美術館の場合は、保坂展人区長と区会議長くらいですがね。)

 吉増さんのご挨拶。「渋谷の街は、日吉の学生時代、よく遊んだところで、キャバレーのボーイさんもやってました(笑)」と、青春時代の思い出にご縁のあるこの街で、展覧会を開けることの感慨を述べられていました。

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 開会式が終わって、茶菓がふるまわれます。わいわいガヤガヤタイムです。さあこれから展示を観てきましょう。吉増さんとの記念撮影、詩人の朝吹亮二さん、それに野崎有以さんもご一緒に。

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第一会場は、二階フロアです。今回の吉増さん展、展示内容の基本コンセプトは一回目の足利市美担当の篠原誠司さんが構築したもので、これまでの詩集一冊一冊の歩みをきちんとフォローしています。それが各会場ごとに空間のありようが違うため、展示物にそう変化はなくても、印象はまるで変わりますね。さあ、毎回恒例ですが、ブログで紹介しますと許可を頂戴して、「取材」の腕章を拝借しました。デジカメで会場風景を撮りましょう。

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 初期の代表作で『頭脳の塔』に収められた「古代天文台」の初出だった「現代詩手帖」の1970年2月号、それが出ていますが、吉増さんの書き込みと手直しの痕跡がよくわかります。この会場の寛いで落ち着いた雰囲気は、草稿をじっくりと読むようにと観者を促すようです。(画像をクリックすると拡大されます。文字も読めますよ。)

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 吉増さん若いころ(1969〜70年)の日記も出ています。読んでみましょうか、「苦しみからのがれようとすることは、別の苦しみの生誕に手をかすことだ」なんてあります。青春期の煩悶、でしょう。吉増剛造の詩における「日記性」ということに思いを馳せました。

 それからこれは珍しい、当時の吉増さんの盟友であった故岡田隆彦さんが、1966年1月ですね、瀧口修造に送った手作りの年賀状というのがありました。「岡田は絵描き志向だった」と吉増さんが仰るように、なるほどアートセンスが発揮されています。

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 参考展示ということですが、会場には、吉増さんが疾走をはじめた70年代の同じ空気のなかで、やはりおおいに刺激的な創作活動を開始したアーティストたちの作品も置かれています。順に、中平卓馬さんの写真、加納光於さんの版画作品、そして吉増さんが兄事された彫刻家若林奮さんの「LIVRE OBJECT」です。若林作品のなかには吉増さんの詩集『頭脳の塔』が閉じ込められているのです。

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 吉増さん中期を代表する詩集といえば、『オシリス、石ノ神』に次いで、『花火の家の入口で』でしょう。文学的な普遍価値?を示す、という意味では、ここらあたりが最高峰を築いたとも言えます。その時期の名作「石狩シーツ」の原稿もありました。

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 最初の詩集『出発』から『怪物君』まで、吉増さんがこれまでに刊行された書物がまとめて集められた情景も壮観です。さあ、では第二会場の地下一階に移動しましょう。

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移動しようとしてふと脇を見ると、鏡のしたに、吉増さんのスナップが。気が付けば、壁のそこここ、それにエレベーターのなかにも吉増さんのスナップがたくさん貼られています。まだ20代のころでしょう、青年の面影が残る写真には、思わずニッコリです(笑)。

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 第二会場、こちらでは近年の二重露光写真だとか、原稿用紙ドローイングといえる「怪物君」シリーズなどが主に展示されています。

 しかしこのフロアの展示の核になるのは、造形家の岩本圭司さんが手掛けた、詩の言葉を立体に造形したオブジェを通して、吉増さん撮影の画像が投射されるこの装置でしょう。

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 この前にしばし佇んで、画像が切り替わるのを鑑賞しましょう。

 それにもちろん、最新版の「火ノ刺繍」や、言葉を打刻した銅板も出ていました。

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 そして吉増さんが大きな影響を受けた画家や文学者にゆかりの作も参考展示で、多数でています。芭蕉や川端康成関連のものなど、ビッグネームの作がずらりと並びます。ここはまあ、与謝蕪村筆の「山水図」と、萩原朔太郎の蕪村論の生原稿を紹介しておきましょう。

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 こんな具合に、見応え充分です。松濤美術館で、9月24日までやってます。入場料は500円、とうんとリーズナブルなのは結構ですね。僕は、今月26日(日)にある、アナウンサーの山根基世さんをゲストに迎えてのイベントと、9月8日(土)の、折口信夫の最後の弟子だった歌人の岡野弘彦さんを迎えてのトークの会にも参加します。みなさんもぜひ。

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 内覧会が終了後は、吉増さんを先頭にして関係者ら、井の頭線の神泉駅近くの中華料理の店に移動しました。開展祝賀の懇親会です。奥さまのマリリアさんも遅れて到着、乾杯のあとは集まった30名ほどの面々を吉増さんがじきじきに紹介くださいました。

 最後は、先日刊行された大著『火ノ刺繍』を送りだした響文社の高橋哲雄さんと、装本の井原靖章さん、編集と吉増さんポートレート撮影の吉原洋一さんが紹介されましたが、書物史におけるひとつの事件、といっていいのではないでしょうか、この大冊と、それともう一冊『舞踏言語』(論創社)、この二冊を書評した座談会が、今月末でしょう、「図書新聞」に載りますので、皆さんご覧くださーい、とは、僕がアナウンスしました(笑)。

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 この夏は猛暑に加えて、日本列島どうやら台風の当たり年になりそうで、まったく困ったことですが、詩の世界では吉増さん台風、ますます大暴れ!こちらはおおいに結構です。思潮社からの吉増さん全詩集の刊行も、ずいぶん延びましたが、さすがにそろそろカウントダウンでしょう。

 お別れはこの引用で。

「“とうとう間に合った、……”と
 縫針が呟いていた、……、……、……。」
                             (吉増 剛造  「火ノ刺繍――永遠の旅人Afanassievに」)

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